すべては屋根裏から始まった。
渋沢栄一の孫である渋沢敬三が、広大な邸宅の片隅にあった物置小屋の天井のない二階で始めたアチック・ミューゼアム。
子爵家のエリートでありながら農民や漁民などの常民に目を向けた渋沢は日常の生活道具である民具とともに、漁業史をはじめとする古文書や書物を集めて研究する学問の場をつくった。
研究員を雇い、全国の研究者と交流して成果や資料を出版する活動はやがて日本の歴史学や民俗学、アーカイブズ、博物館を動かしていく。
収集・収蔵された膨大な資料と刊行物を手に取って調べることを通じて渋沢敬三が織りなした在野の知の営為を書物から読み解く。