世界に誇る大長編・大傑作の完全版を初公開!
明治・大正・昭和の激動の世紀に、日本人はいかに苦難と苦悩の道を歩み、希望をつないできたか。時代の証言として描く近代精神史。
昭和7年、5・15事件、犬養毅首相暗殺。
経済統制、労働争議の頻発、軍国的な言論思想統制の拡大、未熟かつ腐敗する政党政治、没落する旧家、軋む家族の関係、マルキシズムに傾倒する若者たち、熾烈を極める弾圧と拷問…。
結核や狂信的信仰に苦悩する若者たちの愛と死を描く。
*本巻「人間の運命10 愛と死―第二部第三巻」は、新潮社版『人間の運命』第二部第三巻「愛と死」(昭41・5初版、昭44・8刊9刷)の著者訂正本を底本とし、やはり著者の校閲した新潮文庫版『人間の運命(五)』(昭51・4刊)を参照した。著者訂正本の見返しには、「昭和六十年九月中旬訂正した― ○光」とある。また、「(この作品で、村を出て海外に新天地を求めていった若い人の、その後を書けたら面白いだろうが)」との付記が見える。(勝呂奏)