幻の作家・中戸川吉二の作品集を刊行!
芥川龍之介は中戸川吉二の小説「イボタの蟲」を「得甲斐のある成功を贖ひ得た」(わが月評)と評し、大正8年6月15日付の菅忠雄宛書簡では「恐らく今月の創作中で第一の傑作だらうと思ひます」と、その感想を述べ、その資質を「毛彫の如き心理描写に長じてゐる」(大正8年度の文芸界)と激賞した。
若くして創作の筆を断ったため、活動の期間の短さから、いつしか「幻の作家」となっていったが、鋭い着想と精緻な心理描写を軸に、不思議な感覚の作風は高く評価されていた。
今日では入手の非常に困難となったその作品群から、代表作を厳選し、関係写真、年譜、参考文献等を付し、選集を刊行することにした。