イズミシキブニッキヲコエテ

『和泉式部日記』を越えて

岡田貴憲 著
ISBN 978-4-585-29106-0 Cコード 3095
刊行年月 2015年10月 判型・製本 A5判・上製 296 頁
キーワード 評論,古典,平安,中古

定価:7,700円
(本体 7,000円) ポイント:210pt

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書籍の詳細
日記ではない、物語なのだ

平安の世を情熱的に生き抜いた和泉式部の「生の声」を伝える『和泉式部日記』。
この作品をめぐる文学史の記述は、はたして鑑賞の域を越えて、正しく評価された結果によるものであろうか。
われわれの眼前に残された幾多の『物語』とただ一つの『日記』。
虚心坦懐に諸伝本と向き合うという平安文学研究の起点へ立ち返り、本文や諸説のゆらぎを読み解き、研究史の陥穽を突く画期的論考。

 

 

目次
はじめに
凡例

Ⅰ 「物語」としての『和泉式部日記』
第一章 『和泉式部物語』の語り手―「草子地」と「視点の融合」の検討を通して―
 一 「日記」説と「物語」説
 二 「超越的視点」への疑問
 三 従来の「草子地」認定とその問題点
 四 「草子地」と「視点の融合」
 おわりに

第二章 帥宮の位置と語り手の位置
 一 通説の問題点
 二 少数説の問題点
 三 寛元本・応永本の問題点
 四 復原本文による解釈
 五 「こなた」と語り手の関係

第三章 「書きなしなめり」考―末尾本文の解釈と〝前提的基層〟―
 一 問題の所在
 二 従来の解釈
 三 「書きなす」の語義
 四 「書きなしなめり」と〝前提的基層〟
 おわりに

Ⅱ 寛元本・応永本『和泉式部物語』の表現世界
第四章 冒頭部と石山詣記事との対照性
 一 「端」を見る人々
 二 端を見る女、身を覗かせる童
 三 始発部としての石山詣
 四 女は何処に居たか
 五 冒頭部と石山詣記事

第五章 「まじらひ」としての宮邸入り
 一 「かたき人」と「たかき人」
 二 女は「召人」か
 三 難解な本文
 四 「まじらひ」としての宮邸入り
 五 女の「召人」意識

Ⅲ 三条西家本『和泉式部日記』本文考
第六章 十月条「童遅参」記事の解釈―本文改変による解釈破綻―
 一 本文と問題点
 二 「人」=「童」説の否定
 三 破綻する解釈
 四 他系統本文の検討
 おわりに

第七章 十月条「紅葉狩り」記事の解釈―本文改変による文脈の反転―
 一 本文と問題点
 二 「とふくもみん」の解釈
 三 「ふかく」の解釈
 四 「たかせ舟」贈答の文脈理解
 五 本文の改変過程

第八章 十一月条「神世より」歌の解釈―誤写を契機とした文脈変更―
 一 諸説と問題点
 二 「雪なれば」の解釈
 三 誤写の可能性
 四 三条西家本の本文改変
 おわりに

Ⅳ 『和泉式部物語』の伝本系統
 第九章 『和泉式部物語』応永本系統再考―島根大学附属図書館桑原文庫所蔵本の位置づけ―
 一 応永本系統の諸本と特徴
 二 桑原本の詳細
 三 実量本の実態
 四 実量本と桑原本
 五 桑原本の位置づけ
 おわりに

第十章 『和泉式部物語』諸本論の再検討―和歌書式の問題を手がかりに―
 一 問題の所在
 二 平安期における和歌同行書式使用の可能性
 三 和歌同行書式の痕跡①―和歌の埋没―
 四 和歌同行書式の痕跡②―和歌の混入―
 五 諸本論の再検討

あとがき
初出一覧
索引
プロフィール

岡田貴憲(おかだ・たかのり)
1985年、北海道札幌市生まれ。2014年、北海道大学大学院博士後期課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員DC2を経て、現在、同特別研究員PD。
論文に、「『狭衣物語』女二宮密通譚の表現意図―「一夜孕み」からの脱却と狭衣即位―」(『古代中世文学論考』第27集、2012年12月)などがある。

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