クダイシロンコウ

句題詩論考

王朝漢詩とは何ぞや
佐藤道生 著
ISBN 978-4-585-29132-9 Cコード 3095
刊行年月 2016年11月 判型・製本 A5判・上製 408 頁
キーワード 漢文,詩歌,古典,平安,中世,中古

定価:10,450円
(本体 9,500円) ポイント:285pt

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書籍の詳細

かつて漢詩・漢文は国家の正統たる表現の方法として社会的ステータスを有し、作詩・作文の巧拙が出世の道を左右した。
詩を媒体とした社交の場である詩宴が天皇や貴族たちのあいだで盛んに催されるなかで、そこに自ずと規範が生み出されるに至った。
詩題の文字をそのまま用いて題意を表した後、題意を敷衍し、故事を以てなずらえ、自らの思いを伝える―平安・鎌倉期に盛行した文体「句題詩」の構成方法の確立である。
この規範の創出は、知識体系を生み出し、詩人の増加、ひいては詩宴の盛行が促進される日本文学史上の画期を作り出したのであった。
政治・文化の場にも深く関わり、他の文学ジャンルにも大きな影響を与えながらも、これまでその実態が詳らかには知られなかった句題詩の詠法を実証的に明らかにし、日本独自の文化が育んだ「知」の世界の広がりを提示する画期的論考。

 

 

目次
口 絵

前言

1 句題詩概説
一、句題詩の構成方法
二、「本文」の構成方法
三、双貫語を含む句題
四、破題の方法
五、句題の詩序
六、構成方法の生成過程
おわりに―残された課題

2 平安時代に於ける句題詩の流行
はじめに
一、句題詩の構成方法
二、双貫語の出現
三、句題詩の評価基準
四、秀句に関する説話
五、和歌の題詠への影響
おわりに

3 句題詩の展開―王朝詩史の試み
はじめに
一、一条天皇の句題詩
二、菅原文時以前―忠臣・道真の句題詩
三、文時の破題―典型と変型
四、双貫語の出現
五、策問・対策との関連
むすび―破題がもたらしたもの

4 秀句の方法
はじめに
一、破題の方法―即字的表現と連想的表現
二、中国故事を用いた連想的表現
結語

5 平安時代の詩序に関する覚書
はじめに
一、藤原明衡の「蔭花調雅琴詩序」
二、端作
三、第一段―詩宴の基本的情報を前置きする
四、第二段―題意を叙述する
五、第三段―序者の述懐
おわりに―詩序の効能

6 省試詩と句題詩
はじめに
一、句題詩の構成方法
二、省試詩と句題詩
むすび

7 『百二十詠』と句題詩
はじめに
一、『百二十詠』の概要
二、詩題に見られる事物―『文鳳抄』に立てられた項目
三、句題詩に見られる『百二十詠』の影響
おわりに

8 平安後期の題詠と句題詩―その構成方法に関する比較考察
はじめに
一、句題の七言律詩の詠法
二、句題の七言絶句の詠法
三、題詠に於ける本説の方法
四、句題詩に於ける本文の方法
五、詩の国風化

9 説話の中の句題詩
一、秀句説話
二、句題詩の構成方法
三、敦周の秀句

10 故事の発掘、故事の開拓
はじめに
一、平安前期に定着していた中国故事
二、入宋僧による漢籍の将来
三、中国故事の発掘
四、本邦故事の開拓
五、開拓の背景

11 保元三年『内宴記』の発見
はじめに
一、『内宴記』の概要
二、他書に見られる保元三年内宴の記事
三、『内宴記』の執筆者
四、俊憲の句題詩
五、俊憲の詩序

12 文人貴族の知識体系
はじめに
一、中国に於ける君臣の論争
二、日本に於ける君臣の論争
三、「朗詠江註」に見える村上・文時の論争
四、平安時代の作詩方法
結語

13 四韻と絶句―『源氏物語』乙女巻補注
はじめに
一、律詩と絶句
二、句題の七言律詩
三、句題の七言絶句
結語

14 平安時代の策問と対策文
はじめに
一、対策の概要
二、『本朝続文粋』に見られる文体の特徴
三、『本朝文粋』との相違点

15 慶滋保胤伝の再検討
はじめに
一、「垂五旬」の解釈
二、慶滋保胤と藤原有国
三、慶滋保胤と菅原文時
結語

16 内宴を見る
はじめに
一、内宴の呼称と儀式次第
二、第一図―公卿が仁寿殿東庭に列立する場面
三、第二図―公卿が仁寿殿に昇殿着座する場面
四、第三図―妓女の舞楽の場面
五、第四図―詩の披講の場面
六、第五図―御遊の場面
七、絵巻が依拠したのは保元三年の内宴か、それとも四年の内宴か

17 柳市・三乗―本邦漢語考
一、柳市
二、三乗

18 「文章」と「才学」―平安後期の用例からその特質を探る
はじめに
一、『中右記』に見える「文章」と「才智」
二、『玉葉』に見える「文章」と「才学」
結語
付・説話に見える「文章」と「才学」

初出一覧
索 引
プロフィール

佐藤道生(さとう・みちお)
慶應義塾大学文学部教授。専攻は古代・中世日本漢学。
著書に『平安後期日本漢文学の研究』(笠間書院、2003年)、『和漢朗詠集 新撰朗詠集』(柳澤良一氏と共著、和歌文学大系四七、明治書院、2011年)、『三河鳳来寺旧蔵暦応二年書写 和漢朗詠集 影印と研究』(勉誠出版、2014年)などがある。

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