チュウゴクゲンダイブンガクケッサクセレクション

中国現代文学傑作セレクション

1910-40年代のモダン・通俗・戦争
大東和重・神谷まり子・城山拓也 編
ISBN 978-4-585-29162-6 Cコード 1097
刊行年月 2018年5月 判型・製本 A5判・上製 700 頁
キーワード 中国,近現代

定価:10,780円
(本体 9,800円) ポイント:294pt

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書籍の詳細
これまで知られていなかった、読まれていなかった、新しい中国文学の世界!
政治的・社会的混乱の時代に残された、小さくとも力強い声をひろい集める―

20世紀前半に中国で発表された厖大な数の小説・詩・戯曲・脚本・エッセイの中から、30を超える作品をセレクト。急速な近代化、列強諸国との衝突、国内の政治的分断など、不安定な状況下で生きた作家が残した作品から、中国の近代をたどる。
モダニズムやアヴァンギャルドといった表現技法を駆使したものや、農民からインテリまで様々な立場の人物をリアルに描写したもの、物語性やエンターテインメント性を追求したものなど、多様な文学作品を掲載。同時に、これまであまり紹介されることのなかった、探偵小説やSF小説、恋愛小説、戯曲、脚本など、様々なジャンル/体裁の作品も収めた。
政治的・社会的混乱の時代のなかで、戸惑いながら日々を生きる人々の不安と、その先に見える希望。現代に生きる私たちも共感することのできる、珠玉の作品を精選。

【本書の特色】
①全ての作品が新訳であり、かつほとんどが日本で初めて翻訳される。これまで日本語で読むことの出来なかった中国文学に触れることができる。
②陶晶孫、劉吶鴎、郁達夫、欧陽予倩、張資平、滕固など、日本留学経験を持つ作家の作品も所収。近代における日中文化交流の一端を知ることができる。
③中国を代表する作家・作品だけでなく、これまで日本で読まれることの無かった探偵小説やSF小説、恋愛小説なども収め、中国文学の多様性を提示する。
④中国文学研究を専門とする研究者によって、読みやすく、精確な訳で作品を味わうことができる。
⑤各作品の末には、作家・作品についての理解を深めることができる解説も掲載した。

 

 

目次
まえがき

第一部 都市から幻想へ 
陶晶孫  独歩/哈達門のカフェ/Café Pipeauの広告/新感覚派
【解説】モダニズムの変奏 中村みどり
劉吶鴎  風景/殺人未遂
【解説】快楽と狂気に身をゆだねて 城山拓也
穆時英  ナイトクラブの五人/プラチナの女体像
【解説】都市に潜む「ピエロ」たちの声 城山拓也
邵洵美  花のような罪悪(抄訳)
【解説】耽美主義と女性崇拝 中野知洋
郁達夫  果てしなき夜
【解説】現代中国における「純文学」の誕生 大東和重
滕 固  瓜実顔
【解説】神経衰弱の留学生による妄想と破滅 大東和重
葉霊鳳  鳩緑媚
【解説】「妖艶で官能的な」文学をめざして 福長悠
施蟄存  将軍の首
【解説】上海モダニストの真面目 大東和重
沈従文  水雲 
【解説】日中戦争下のネオ・ファウスト 津守陽

第二部 戯曲、小説のゆくえ 
孫了紅  歯を盗む話
【解説】人々の心に潜む「内幕」を暴く 池田智恵
顧均正  性転換
【解説】近代中国人女性は「科学的性転換」の夢を見るか 上原かおり
欧陽予倩 潘金蓮(抄訳)
【解説】男旦とモダンガール―欧陽予倩『潘金蓮』の白い胸 田村容子
徐卓呆  開幕広告
汪仲賢  恋愛小説家の奇遇 
【解説】マルチ文人の活躍―演劇・小説・出版・映画 藤野真子
周痩鵑  レコード盤
程瞻蘆  酢と蜜
【解説】時代の変遷と人々の欲望を映し出す言情小説 張文菁
畢倚虹  北里の赤子
朱痩菊  悔恨記
【解説】妓女をめぐる文学 神谷まり子
張恨水  上海特急(抄訳)
【解説】連載小説と「騙す女」 神谷まり子

第三部 知識人の変容 
張天翼  二十一人
【解説】一兵士が見た戦争 高橋俊
蕭 紅  花 園
【解説】読者をやわらかに搔きむしる、生存の寓話 津守陽
王平陵  民族主義文芸運動宣言/国賊の母親
【解説】民族主義文学と抗日戦争 中野知洋
黄震遐  大上海の壊滅(抄訳)
【解説】戦争とはなにか・戦場とはどこか 高橋俊
張資平  上海のルンペン・インテリゲンチャ
【解説】文学に魂を売った男 城山拓也
洪 深  占領後の桃花―青島スケッチ(映画脚本)/青龍潭(抄訳)
【解説】故郷のスケッチ―青島そして江南 鈴木直子
穆時英  南北極(抄訳)
【解説】早熟の天才が描く上海のアンダーグラウンド 福長悠
陶晶孫  濃霧/村山知義/文学大衆化問題
【解説】プロレタリア文学の模索 中村みどり
瞿秋白  大衆文芸の問題/再び大衆文芸を論じ止敬に答える
【解説】言語の革命を夢見て 鈴木将久

図版出典一覧
あとがき
翻訳者、解説者一覧
プロフィール

大東和重(おおひがし・かずしげ)
関西学院大学法学部教授。専門は日中比較文学、台湾文学。
主な著書に、『台南文学―日本統治期台湾・台南の日本人作家群像』(関西学院大学出版会、2015年)、『郁達夫と大正文学―〈自己表現〉から〈自己実現〉の時代へ』(東京大学出版会、2012年)、訳書に、黄錦樹『夢と豚と黎明―台湾熱帯文学3』(共訳、人文書院、2011年)などがある。

神谷まり子(かみや・まりこ)
日本大学文理学部 中国語中国文化学科教授。専門は中国近現代文学、清末民初文学。
主な著作に、『ドラゴン解剖学・竜の子孫の巻―中華文化スター列伝』(共著、関西学院大学出版会、2016年)、『中国現代女性作家群像』(共著、論創社、2008年)、翻訳に、王徳威『抑圧されたモダニティ―清末小説新論』(共訳、東方書店、2017年)、林白『たったひとりの戦争』(共訳、勉誠出版、2012年 、齊邦媛『巨流河』(共訳、作品社、2011年)などがある。

城山拓也(しろやま・たくや)
立命館大学言語教育センター外国語嘱託講師。専門は中国近現代文学、モダニズム、漫画研究。
主な著作に、『中国モダニズム文学の世界―1920、30年代上海のリアリティ』(勉誠出版、2014年)、『ドラゴン解剖学・登竜門の巻―中国現代文化14講』(共著、関西学院大学出版会、2014年)、「『Bringing Up Father』から『王先生』へ―葉浅予と1920年代上海の都市文化」(『マンガ研究』第23号、2017年)などがある。

書評・関連書等

「東京新聞」(2018年7月1日)に紹介文が掲載されました。
朝日新聞」(2018年7月7日)読書面に書評が掲載されました。
「日本経済新聞」(2018年8月25日)の「文化往来」欄に紹介記事が掲載されました。

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