15世紀末から開拓され、ヨーロッパがアジアと出会った海上路、東インド航路。この航路は、大西洋を南下して、喜望峰を越え、アジア各地へと至る長距離ルートであった。以降、スエズ運河開通によりルートや移動手段が多様化するまで、多くの人やモノがこの航路を往来し、多数の記録簿や報告書、書簡、日記などの史料群が残された。
このような史料の書き手であった移動者であるヨーロッパ人と移動先のローカルな人々との関係は、航路上にあった「接触領域=コンタクト・ゾーン」の中で取り結ばれ、記録された。航路の変遷をたどり、そこに残された史料から、現地の人々の営みや関係性、特に奴隷や移動労働者といった可視化されにくい人々の輪郭を探る。