パリ文壇にデビューし、初めて民間から起用された日本大使館の文化技術顧問として活躍したフランス留学時代。澁澤龍彦、横尾忠則など多くの若者たちが、その教えを乞いに、フランスの著者のもとに集まった。
マルローの東宮御進講を実現させ、筑波大学では「科学・技術と精神世界」という、研究者としてはタブーであった精神世界に踏み込んだ、国際学会を実現させる。
学問的には異端者と評されることもありがながら、自身の信念のもと、霊性の世界に真摯に対峙し続けた著者の、揺れ動く魂の軌跡をあますことなく書き上げる。
執行草舟、絶讃!
壮大な魂の叙事詩。
生涯を深奥世界のミステリー探索に賭した男の、勇気と、哀しみと、驚異に満ちた
二十一世紀の黙示録。
執行草舟(『脱人間論』、『生くる』、『友よ』などの著者)
【第一巻あらすじ】
最後のフランス生活から帰国した著者は、三田寺町の常林寺で一本の素朴な薔薇の木を見て若き日のある夢を想起する。
閉ざされた「あなぐら」から、ド・ゴール特使として来日したマルローとの電撃的邂逅で啓示を得て抜け出し、初めて未来に青い雲を見たのだった。
妖しい美少女「ロリータ」や、出光佐三翁の懐刀の快男児、あるいは二人の禅の巨匠などの異色人物が登場し、波瀾に満ちた著者の運命の伏線を綾織る。繰りかえされる不思議体験をとおして、異界は実在するかとの漠然たる問いが課される。仏政府給費留学生として一九六三年に三十歳で渡欧する。
【第一巻の主な登場人物】
林秀穎(曹洞宗常林寺方丈)、ダライ・ラマ十四世法王、ペマ・ギャルポ(チベット出身政治学者)、石堂淑朗(脚本・評論家)、高見順(小説家・詩人)、伊藤整(小説・評論家)、丸岡明(小説・能研究家)、ロリータ、巌谷大四(文芸評論家)、芥川比呂志(龍之介嫡男、俳優・演出家)、芥川文(龍之介夫人)、アンドレ・マルロー(作家、ド・ゴール麾下文化担当国務大臣)、ルネ・キャピタン(ド・ゴール麾下法相、東京日仏会館館長)、灘尾弘吉(文部・厚生大臣)、丹下健三(建築家)、岡本太郎(画家)、川喜多かしこ(東和映画代表)、オシップ・ザツキン(彫刻家)、クロード・オータン=ララ(映画監督)、ミレーヌ・ドモンジョ(映画女優)、マルセル・アシャール(作家)、久松眞一(京大教授、禅師)、廣瀬楚庵(禅画家)、小松清(仏文学、マルロー側近・訳者)、山﨑省三(藝術新潮編集長)、出光佐三(出光商店創業主、日章丸船主)、松見守道(出光翁の懐刀)、鈴木大拙(仏教学者、『日本的霊性』)、岡村美穂子(大拙師最側近、鈴木大拙館名誉館長)、亀井勝一郎(文芸評論家)、前田陽一(仏文学者)、モーリス・パンゲ(日仏学院長、『自死の日本史』)