漢文化の広がり・変化と地域的特徴を探る
漢代には墓や祭祀施設など、墓葬にまつわる空間を画像や紋様で装飾することが流行した。
具体的には、墓地への入り口や祭祀施設など地上の諸施設、そして地下空間である墓室の門や壁面・梁・柱・棺などの装飾である。通常は画像石・画像磚や壁画など呼び分けられる。
本書はこれらを「墓葬装飾」と総称し、漢代の統一化と地域化について論じる。
このような視点に立つ理由は、通史的に漢代を見た場合、特に後漢は、漢文化の浸潤・統一期であると同時に、地域の成熟に裏付けられた地域の台頭・地域化の時代であるからだ。
相反するこのような要素を考察する材料として、墓葬装飾は相応しい。なぜなら「モノ」であるが故に地域に限定された作り手の集団が存在し、表象によって時代性および地域性を反映するからである。
本書は歴史地理学および考古学的手法を利用して「モノ」の側面にアプローチし、図像学および歴史学的方法から「文化」を考察し、歴史的視野から地域的まとまりの形成と画像の受容について切り込むものである。
漢代の墓葬装飾については、これまで美術史や考古学方面からの研究蓄積がある。しかし総合的な画像の主題に関するものが多く、本書のような歴史地理および歴史学的視点からの、統一と地域化という漢代の特徴を論じた研究は皆無である。