大谷光瑞(1876~1948、浄土真宗本願寺派第22世宗主)はアジア仏教徒のリーダーであることを自負し、「国家の前途」を強く意識しつつ、西本願寺の果たすべき世界的役割を熟考した人であった。彼が主宰した「大谷探検隊」だけが強調されがちであったが、光瑞の活動は、それだけに限定されるべきものではなく、海外開教の先導者としての側面や、近代日中交流史上での活躍も見落としてはならない。
中国を中心として、ロシア極東地域、朝鮮半島、台湾、チベットなどアジア諸地域への光瑞の認識を概観し、今から100年ほども前に、国家の前途を世界との関わりのなかで考えようとしていたその軌跡をたどる。