世界に誇る大長編・大傑作の完全版を初公開!
明治・大正・昭和の激動の世紀に、日本人はいかに苦難と苦悩の道を歩み、希望をつないできたか。時代の証言として描く近代精神史。
亡き義母のもとに残された兵隊たちの手紙は、戦闘にあけくれる中国の各地から、「お母さん」と絶叫するようだった。
大陸視察で目にしたものは、輸送船に満載された日の丸を振る兵士たち、戦地で野獣と化した日本軍であった。緊迫する世界情勢、進む戦時体制、募る不安を描く。
*本巻「人間の運命12 戦野にたつ」は、新潮社版『人間の運命』第二部第五巻「戦野にたつ」(昭42・7初版、昭46・6、13刷)の著者訂正本を底本とし、やはり著者の校閲した新潮文庫版『人間の運命(五)』(昭51・4刊)を参照した。著者訂正本の見返しには、「一九六五年九月末/訂正終り 光」とある。(勝呂奏)