和様の完成形を示す、最古級の日本書紀
『岩崎本 日本書紀』は、写本・二巻で構成される。
冠位十二階や十七条憲法の制定など聖徳太子の記事を収載する「推古天皇紀」(巻第二十二)、および、蘇我蝦夷・入鹿親子の台頭や乙巳の変の記事のある「皇極天皇紀」(巻第二十四)の二巻が残っており、双方の写本としては現存最古のもの。
本文は、抑制された筆線の端正な和様の字すがたで書写されており、日本的な美意識にあふれた平安時代中期を代表する典籍の写本といえる。また、朱書の仮名・乎古止点・声点(平安時代中期)、墨書の仮名・乎古止点(平安時代後期)という極めて古い時期の書入れを有しており、国語学上においても貴重な資料である。一条兼良が卜部家本との校合の上に書き加えた墨書の仮名・返点・注記も残されており、兼良の学問の一端を伝えている。
旧三菱財閥の本家・岩崎家に伝来していたことから「岩崎本」の名称で呼ばれる。
【本書の特長】
・京都国立博物館所蔵の国宝より、日本文化史上、特に大きな意義を持つ『岩崎本 日本書紀』を全編原寸・原色で影印。フルカラー全編公開は史上初。
・高精細な製版・印刷により、流麗な筆致、詳密な書入・訓点を忠実に再現
・石塚晴通(国語学)・赤尾栄慶(古写経学・文化財学)・羽田聡(日本史)の諸氏による解題を附し、歴史的・文化史的位置づけを示した。