「規範」が生み出す文化史上のダイナミズムを探る
前近代日本において、中国は大いなる先例としてあった。政治や文化のさまざまな局面において、中国に関する知識は規範として参照され、現実を規定していった。
一方で「知」の内在化は、観念としての古典中国の世界を増幅させ、連想の糸を紡ぎ合わせ、織り重ねることで、故事と表現とを結びつける新たな体系を創り出していった。
「規範」としての中国文化を日本人は如何に読み替え、自己のものとして変容させていったのか。
平安期を中心に、公文書や詩歌、物語や学問注釈の諸相を精緻に読み解くことで、日本文化における思考の枠組みを明らかにする。