勅撰和歌集の第一として日本文化史上に大きな位置をなした『古今和歌集』。
成立から現代にいたるまで、さまざまな形で受容・咀嚼されてきた同集にまつわる解釈史は、中世日本において特筆すべき展開を見せた―。
鎌倉時代に始まると考えられる、秘注的な内容を持った注釈の流行である。
いわば荒唐無稽とも言うべき内容を持ったこれらの秘注的注釈は、鎌倉時代から室町時代前半にかけてかなりの権威を持って幅広く流布し、謡曲、連歌、物語など、その時代の文学や文化に大きな影響を与え続けた。
中世古今和歌集注釈書における重要伝本である『毘沙門堂本古今集注』、そして、中世古今集註釈をめぐる諸問題について、和歌研究をはじめ、文献学・物語・説話・国語学・思想史等の視角から読み解き、中世の思想的・文化的体系の根幹を立体的に描き出す。