天才翻訳家ウェイリーの人物像、業績をまとめ、『源氏物語』の魅力を解説した『アーサー・ウェイリー―『源氏物語』の翻訳者』、18世紀中国の代表的文人・袁枚の詩日記を、アーサー・ウェーリーによる英訳も参照しつつ日本語近代詩に蘇らせた『袁枚―「日曜日の世紀」の一詩人』他、『源氏物語』関連の単行本未収録論文、これからの教育・教養についての問題を提起した論文などを収録。
平川祐弘決定版著作集全18巻、完結!
本書の醍醐味は、異国の文学を自国の文化に吸収するという点で、著者平川祐弘とウェイリーとのベクトルが見事に重なるところにある。ウェイリーと同様にテクストに真摯に向き合って行う平川の比較文学のありようが、ウェイリーの翻訳のありようとぴったり重なるのである。(河合祥一郎、『読売新聞』)
パイオニアーであるということは自主的な判断を下すことを絶えず求められることであり、そのように常に自分の頭で考えながら独走を続けたことでウェイリーはオリジナルな業績の数々を生み出した。学問世界の先駆者にはその人のみに許される幅広い選択の自由がある。ウェイリーはその特権を十全に生かした先発者だったから、東洋の詩文を西洋に伝える際に、類稀な自己の英語表現能力を存分に発揮できたのである。中国詩歌や『源氏物語』などの内在的価値を確信したウェイリーは、その価値ある東方の宝を西方に伝えて、質量ともに優れた大翻訳家の仕事を成し遂げた。本書は東の大翻訳者でもある平川が、西の学匠詩人ウェイリーの人と作品を語る、まことに行届いた、奥ゆかしい作品である。