時を隔ててもなお読まれるべき、重要な論文を大胆に収録。
各巻ごとに全体の「総説」、各論文を読み解く「解説」及び「研究史の総括と展望」を附し、これまでの研究成果を整理、今後の新たな展望を示す。
第3巻では、『源氏物語』生成の問題を外在/内在的視点から読み解く。
第1部 歴史・文化との交差
世界に存在するすべての文学や文化は、人間の産んだ歴史的創造物に他ならない。とりわけ、『源氏物語』を生成した歴史と文化的背景について論ずる方法は多様であり、「絵巻」を通した絵画的視点、音楽伝承譚の史的基層、海彼の世界的ベストセラー『白氏文集』の内在化も重要である。つまり、『源氏物語』の〈歴史的文脈〉に対して、同時代の史実・文化との交差の測定は喫緊の課題なのである。
第2部 語り手・書き手・作者
『源氏物語』を生成する主体について、かつては一律に「作者」と呼んで済ませていたが、今日の議論では「語り手」「書き手」「編纂者」「表現主体」「話者」「物語作家」「〈紫式部〉」等々、さまざまな概念が飛びかう。「書写者」の存在も看過しがたい。また「語り」の文学などといわれたりもした『源氏物語』だが、実は「書く」こと、エクリチュールについての徹底的な思考を要請する文学でもあろう。