アジア遊学145
テイコクホウカイトヒトノサイイドウ

帝国崩壊とひとの再移動

引揚げ、送還、そして残留
蘭信三 編
ISBN 978-4-585-22611-6 Cコード 1321
刊行年月 2011年9月 判型・製本 A5判・並製 248 頁
キーワード 戦争,アジア,近現代

定価:2,640円
(本体 2,400円) ポイント:72pt

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書籍の詳細
帝国日本の消滅とともに生じた、引揚げ、送還、残留の問題を、いまなお残された課題として検証する

日本は近代化と同時に帝国化を推進していき、植民地や勢力圏にひとびとが輩出されていった。
同時に、勢力圏から多くのひとびとが内地に流入、さらに朝鮮から満洲へなど、勢力圏内でも人口の大移動が生じた。
そして、敗戦による帝国の崩壊によって、劇的な逆流が生じた。
そのような終戦直後の膨大なひとびとの移動は、単に帝国崩壊によって引き起こされただけでなく、戦後東アジアの地域秩序の形成によっても強く規定されていた。
その過程で、日本国内における在日朝鮮人という存在がもたらされ、勢力圏に中国残留孤児をはじめとする「日本人残留者」が生み出された。
そしてそれは、単にひとびとが「新たな国境」を越えて大量に動いた(あるいは残った)というだけではなく、移動したひとびとが戦後の当該社会にどのように包摂され、あるいは排除されていったのかという社会問題と深く関連していた。

 

 

目次
序論―いま、帝国崩壊とひとの再移動を問う 蘭信三

第Ⅰ部 朝鮮をめぐるひとの再移動の諸相
 日本帝国と朝鮮人の移動―議論と政策 外村大
 朝鮮における日本人引揚げのダイナミズム―逃亡・引揚げ、送還・抑留、追放・懲罰の 変奏曲 李淵植(翻訳 李洪章)
 北朝鮮からの引揚体験 山本千恵子
 「南朝鮮」からの引揚げ―帝国を移動した私たちの家族 熊谷佳子(編集:大場樹精)
 在満朝鮮人の帰還 田中隆一
 「密航」に見る在日朝鮮人のポスト植民地性 福本拓

第Ⅱ部 満洲をめぐるひとの再移動の諸相
 満洲移民の引揚経験―岐阜県黒川開拓団を事例に 猪股祐介
 満洲からの引揚体験 坂岡庸子(語り:溝口節)
 中華人民共和国の建国と中国朝鮮族の「創出」 李海燕
 韓国と中国延辺に分かれて―龍井恩真中学校同窓生の戦後 花井みわ
 北方民族オロチョン社会における植民地秩序の崩壊と再編 坂部晶子
 〈異国〉を〈祖国〉として―いまも中国で生きる残留孤児 張嵐

第Ⅲ部 沖縄、台湾、南洋をめぐるひとの再移動の諸相
 ある沖縄移民が生きた南洋群島―要塞化とその破綻のもとで 森亜紀子
 フィリピン日本人移民の戦争体験と引揚げ―沖縄出身者を中心に 飯島真里子
 蘭印引揚者のライフヒストリー 林英一
 植民地台湾における沖縄出身者―引揚者在外事実調査票から見えてくるもの 野入直美
 「故郷」としての台湾―台北市青田街のコミュニティ活動と植民地の記憶 松田ヒロ子
 慰霊からボランティアへ―ダバオがつなぐ日本人と日系人 木下昭

第Ⅳ部 帝国崩壊後の様々な戦後
 在日朝鮮人の戦後と私 金静媛
 引揚援護活動と二日市保養所―女性引揚者の沈黙のなかで 坪田=中西美貴
 二つの帝国、四つの祖国―樺太・サハリンと千島・クリル 中山大将
 戦後開拓と戦後海外農業移民 安岡健一
 中国にルーツを持つ子どもたちへの中国語教育 高橋朋子
 アルキとは誰か―フランスにおけるもう一つの「引揚者」問題 松浦雄介
プロフィール

蘭 信三(あららぎ・しんぞう) 1954年佐賀県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。博士(文学)。
熊本大学(1983年~96年)、京都大学(96年~2008 年)を経て上智大学外国語学部国際関係副専攻教授。国際社会学、歴史社会学専攻。
主な著作に『「満州移民」の歴史社会学』(行路社、1994 年)、『「中国帰国者」の生活世界』(編著、行路社、2000年)、『日本帝国をめぐる人口移動の国際社会学』(編著、不二出版、2008年)など。

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