帝国日本の消滅とともに生じた、引揚げ、送還、残留の問題を、いまなお残された課題として検証する
日本は近代化と同時に帝国化を推進していき、植民地や勢力圏にひとびとが輩出されていった。
同時に、勢力圏から多くのひとびとが内地に流入、さらに朝鮮から満洲へなど、勢力圏内でも人口の大移動が生じた。
そして、敗戦による帝国の崩壊によって、劇的な逆流が生じた。
そのような終戦直後の膨大なひとびとの移動は、単に帝国崩壊によって引き起こされただけでなく、戦後東アジアの地域秩序の形成によっても強く規定されていた。
その過程で、日本国内における在日朝鮮人という存在がもたらされ、勢力圏に中国残留孤児をはじめとする「日本人残留者」が生み出された。
そしてそれは、単にひとびとが「新たな国境」を越えて大量に動いた(あるいは残った)というだけではなく、移動したひとびとが戦後の当該社会にどのように包摂され、あるいは排除されていったのかという社会問題と深く関連していた。