世界に誇る大長編・大傑作の完全版を初公開!
明治・大正・昭和の激動の世紀に、日本人はいかに苦難と苦悩の道を歩み、希望をつないできたか。時代の証言として描く近代精神史。
9月1日の大地震は、日本の社会を根こそぎ揺り動かし、次郎の運命をも狂わす大震災となった。大災害の惨状と混乱、政治や社会の混迷、復興計画と闇市経済など激変する社会情勢をの中で、次郎は留学を断念、加寿子との愛も終わり告げる。
*本巻「人間の運命6 失われた人―第一部第五巻」は、新潮社版『人間の運命』第五巻「失われた人」(昭39・5初版)の著者訂正本を底本とし、やはり著者の校閲した新潮文庫版『人間の運命(三)』(昭51・2刊)を参照した。著者訂正本の見返しには、「訂正済み」、「二回目訂正―一九八五年夏」とある。