漢文日記に古代・中世を探る
十二世紀後半から十三世紀にかけての歴史的大変革の時期を当事者の一人として生き抜いた九条兼実。
その兼実の残した日記『玉葉』はさまざまな事実や事件に関わる良質の情報に満ちた第一級の史料として高い評価が与えられてきた。そこには、平安末期から鎌倉初期における摂関家の実態や政治・宗教・文化への関わり、儀礼や学問のあり方など、多方面に資する重要な記事が数多く含まれている。
『玉葉』の記述を一字一句詳細に検討し、そこに描かれた歴史叙述を諸史料と対照することにより、九条兼実と九条家、そして同時代の公家社会の営みを立体的に描き出す。