前近代日本の知識基盤を分析するために構築を進めている「和漢オントロジ」を、より高次かつ具体的・汎用的に利用するために、研究モデルの提示と、データ提供、ツールの開発に取り組んできた「和漢古典学のオンシロジ」シリーズと呼称すべきプロジェクトから派生した研究成果の一部。
「時間編:六国史」における地震と六国史、鎮魂の東歌では、「阪神淡路大震災」「東日本大震災」を扱い、前者は今昔物語集所収話が、京都の仁和大地震発生の不安な状況を反映しており、光孝天皇崩御の関係とも無縁ではないことを説き、後者では東日本大震災とその災害復興の動向に音楽・文学・映画などが果たした役割を示し、それのことは古今和歌集巻20東歌の編纂意図を読み解くヒントにもなるビジョンを示した。
ある意味で、古典研究の現代的意義を提示したもので、その成果を速やかに提示することは、現代のように災害列島と化す一方で、地震・津波の被災者への鎮魂記憶が風化しようとしつつある現代において、それを風化させないための古典文学研究、その研究を支援するための基盤情報の整備を訴える一冊。