人類にとってかけがえのない文化の遺産すべてをテクストとしてとらえ、その創造や意義をテクストとして読み解く―
アーカイブス・物質文化・視角文化の3つの視角を軸に、統合テクスト学の知見より人文学研究の新たなステージを示す。
特集1 文化遺産としての朝鮮通信使
日韓国交正常化50周年を記念して、名古屋市蓬左文庫では、特別展「豊かなる朝鮮王朝の文化―交流の遺産」を開催した。人類文化遺産テクスト学研究センターはこれに共済として協力し、蓬左文庫所蔵の朝鮮本の白眉『高麗史節要』のデジタル・アーカイヴス化を行い、成果を提供した。それと同時に、日韓の歴史的な文化交流の焦点である朝鮮通信使をめぐる文化遺産とその記憶、そして影響の種々相について、アメリカと韓国および日本におけるこの分野の第一人者に、それぞれご自身の研究史を回顧しつつ、新たな発見を提示していただいた。
特集2 前近代社会における知の伝達方法
人類文化遺産テクスト学研究センターは、その発足にあたって著名なエジプト学者であるベルリン自由大学のヨヘム・カール教授をお迎えして、オープニング・コロキアム「全近代社会における知の伝達方法」を開催した(2014年4月19日)。このコロキアムでは、カール教授の招聘講演に続いて、名古屋大学の和田壽弘教授、安部泰郎教授による公演が行われたが、この特集はこれらの講演の報告に古代ギリシアの事例報告を追加する形で構成されている。時空を異にする四つの文明社会における知の伝達方法をめぐる議論は、今後のセンターの活動の方向性にも大きな示唆を与えるものとなろう。
特集3 聖なるもののイメージとマテリアリティ
本特集は、宗教において志向される〈聖なるもの〉の形象を、諸分野の学術的知見を結集して捉え直すものである。様々な宗教の展開の中で、現実を越えた〈聖なるもの〉が常に物質性に根ざして発現する。またそれらは、文字・図像・身体・聖遺物・音声・建築・都市空間といった多様な要素によって織りなされるテクストとして現出する。本特集では、様々な宗教実践の事例を分析・比較することを通して、こうした宗教における形象と物質性の問題についての、総合的な展望の獲得と考察の深化を目指す。
特集4 プトレマイオス朝エジプトの採石場におけるグラフィティと知の伝達
人類文化遺産テクスト学研究センターの物質文化部門では、ギリシアとエジプトを包摂する地中海世界を対象として、高度な古代文明の創造に寄与した知識の伝達と組織化のプロセスの解明に取り組んでいる。現在、このプロジェクトでは、口承・文字・図像という知識の伝達媒体のあり方を理論的な側面から考察する共同研究(科学研究費補助金基盤研究(A)「古代地中海世界における知の伝達の諸形態」研究代表者・周藤芳幸)のもと、アコリス考古学プロジェクト(代表者・川西宏幸)との連携を通じたエジプトにおける関係一次史料の蒐集を続けているが、本特集はその中間的な成果と将来に向けた展望の提示を目的として企画された誌上シンポジウムの報告である。
*Vol.3以降につきましては、勉誠出版からの刊行はございません。
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名古屋大学人文学研究科附属
人類文化遺産テクスト学研究センター
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