偽りの歴史はいかにして創られたのか
歴史をかたる―。
人間のこの営みの一面を示すものとして、偽文書や由緒書は、近年、その史料的価値が見いだされつつある。
特に近世から近代にかけて、地域の優位性、淵源や来歴を語るために、多様な偽文書や偽りの史的シンボルが創られていった。
それらのなかには、地域に根ざし、偽りの歴史を語り継ぐ装置として、今なお命脈を保つものが多く存在する……。
史的シンボルが群立し、「椿井文書」なる偽文書が地域の由緒に大きく関わる北河内地域を中心に、偽文書や由緒書の生成・流布の過程を解明。
当該地域における歴史叙述の脈絡を捉え直し、戦国期に寺内町を次々と生み出した地域秩序を明らかにすることで、地域史の再構築をはかり、歴史学と地域社会との対話を模索する。