ユイショギモンジョトチイキシャカイ

由緒・偽文書と地域社会

北河内を中心に
馬部隆弘 著
ISBN 978-4-585-22231-6 Cコード 3021
刊行年月 2019年2月 判型・製本 A5判・上製 752 頁
キーワード 日本史,近世,中世

定価:12,100円
(本体 11,000円) ポイント:330pt

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書籍の詳細
偽りの歴史はいかにして創られたのか

歴史をかたる―。
人間のこの営みの一面を示すものとして、偽文書や由緒書は、近年、その史料的価値が見いだされつつある。
特に近世から近代にかけて、地域の優位性、淵源や来歴を語るために、多様な偽文書や偽りの史的シンボルが創られていった。
それらのなかには、地域に根ざし、偽りの歴史を語り継ぐ装置として、今なお命脈を保つものが多く存在する……。
史的シンボルが群立し、「椿井文書」なる偽文書が地域の由緒に大きく関わる北河内地域を中心に、偽文書や由緒書の生成・流布の過程を解明。
当該地域における歴史叙述の脈絡を捉え直し、戦国期に寺内町を次々と生み出した地域秩序を明らかにすることで、地域史の再構築をはかり、歴史学と地域社会との対話を模索する。

 

 

目次
序 章 問題の所在と本書の構成
  一 筆者の研究の歩み
  二 本書の研究姿勢
  三 本書の課題
  四 本書の構成

第一部 由緒の形成過程と偽文書
第一章 津田山の山論と三之宮神社文書
  はじめに
  一 三之宮神社の由緒
  二 土豪の由緒
  三 氷室の由緒
  おわりに
第二章 城郭由緒の形成と山論―津田城と津田氏の虚像―
  はじめに
  一 津田地域の概要
  二 津田氏由緒の創出とその展開
  三 戦国期津田地域の特質
  四 津田氏と津田城の実態
  おわりに
第三章 交野天神社の祭祀構造と樟葉宮伝承地
  はじめに
  一 交野天神社の由緒とその変遷
  二 前近代における交野天神社と貴船神社の関係
  三 明治期における由緒の変転
  むすびにかえて―その後の展開―
補論 「交野天神縁起」について
第四章 茄子作の村落秩序と偽文書
  はじめに
  一 端野家文書の分類
  二 賢浄による偽文書創作の開始
  三 浄玄による賢浄の継承
  四 茄子作村の村落秩序とその変容
  五 端野熊吉による第三の偽作
  六 改竄された系譜と実際の系譜
  七 端野熊吉の修史事業と啓蒙活動
  八 その後の修史事業における対応
  おわりに
第五章 蝦夷の首長アテルイと枚方市
  はじめに
  一 アテルイ処刑地宇山説と「首塚」の課題
  二 禁野交野について
  おわりに
  付論1 石碑の建立をめぐって
  付論2 石碑建立後の動向と「首塚」の造成

第二部 椿井文書の創作と展開
第一章 椿井文書の基礎的考察
  はじめに
  一 研究史上の椿井文書
  二 『五畿内志』と椿井文書
  三 南山郷士関係の椿井文書
  四 椿井文書の作成過程
  五 椿井文書がもたらした影響
  おわりに
第二章 椿井政隆による偽文書創作活動の展開
  はじめに
  一 「興福寺官務牒疏」にみる椿井政隆の活動範囲
  二 河内国石川郡太子村の叡福寺
  三 近江国伊香郡柳ヶ瀬村の柳ヶ瀬家
  四 面的にみた椿井政隆の行動パターン
  おわりに
第三章 椿井文書が受容される理由
  はじめに
  一 作成の実態
  二 伝播の二系統
  三 歴史学の対応
  おわりに
第四章 三浦蘭阪の『五畿内志』批判
  はじめに
  一 三浦家の木活字本について
  二 蘭阪の主張
  三 牧郷一宮から片埜神社へ
  おわりに

第三部 北河内の寺内町と地域秩序
第一章 楠葉郷の石清水八幡宮神人と伝宗寺
  はじめに
  一 伝宗寺相論の顛末
  二 伝宗寺相論の余波
  三 楠葉郷の復元
  四 楠葉郷の衰退と枚方寺内町の興隆
  おわりに
第二章 石清水八幡宮勢力の展開と招提寺内町
  はじめに
  一 由緒のなかの小篠家
  二 近世初期の小篠家
  三 戦国期の小篠家
  四 「誓円ノ日記」にみる小篠家
  おわりに
第三章 享保期の新田開発と出口寺内町
  はじめに
  一 出口寺内町の成立過程
  二 一八世紀初頭の新田開発
  三 開発前の姿と出口寺内町の復原
  おわりに
第四章 枚方寺内町の沿革と対外関係
  はじめに
  一 枚方坊の開基伝承
  二 実従入寺までの枚方寺内町
  三 枚方寺内町の対外交渉と殿原
  四 枚方寺内町の終焉
  おわりに
第五章 牧・交野一揆の解体と織田権力
  はじめに
  一 交野郡の地域秩序と牧・交野一揆
  二 安見氏による交野城の築城
  三 織田権力下における安見氏の支配
  四 淀川川中島の寄進にみる牧郷の支配
  おわりに
補論 河内における「神君伊賀越え」
終章 北河内の戦国時代
  一 津田城・氷室・椿井文書
  二 楠葉から枚方へ
  三 牧・交野一揆と織田権力

あとがき
初出一覧
索  引
プロフィール

馬部隆弘(ばべ・たかひろ)
1976年生まれ。大阪大谷大学准教授。専門は日本中世史・近世史。
著書に『戦国期細川権力の研究』(吉川弘文館、2018年)、『楠葉台場跡(史料編)』(財団法人枚方市文化財研究調査会・枚方市教育委員会、2010年)などがある。

書評・関連書等

★書評・紹介★
「ヒストリア」280号(2020年6月)に書評が掲載されました。
 →評者:片山正彦氏

★広告情報
「朝日新聞」(2019年2月23日)にサンヤツ広告を掲載しました。

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