豊富な資料・情報の分析から、現代中国の情況に実証的に迫る。
驚異的発展と制度矛盾の現状、外資の幻滅・・・―中国は失敗国家か?
世界が目を見張る「中国式発展モデル」のもとでなぜ「社会的安定」というようなことが問題となるのか。
なぜ「経済の奇跡的発展」によっても、ささやかな生活を求める民衆を慰撫することができず、逆に彼らに忍耐を強いることになったのか。
改革開放政策が生み出した社会構造と、経済的奇跡の推進者を演じてきた中国政府の施策の矛盾を分析し、中国社会の将来像を考える。
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長年にわたり巨額の外資が中国に進出したが、その効果は中国経済の発展を促進し、その市場化を推し進めたことのほかに、世界的にもう一つの期待が込められていた。
それは経済の市場化を通じて外資は中国政治の民主化を推進し、中国をできる限り早く海外とリンクさせることであった。
これに市場のルールをリンクさせるだけではなく、文化や価値観をも共有することも含まれていた。
30年前、外資は中国経済の成長を牽引するトロイカの一頭としてその経済的効果は世界中がみな認めているところだったが、それが担っていたはずの政治的使命(一部の多国籍企業はすすんでその使命を認めていた)、つまり中国民主化の推進はいったいどれほど達成されたのであろうか。
中国経済の「光と翳」と言われる、林立する高層マンションと住宅難に苦しむ人々、海外で住宅やブランド品を買い漁る人々と病院にも行けない人々、農民一人の年収を一夜の宴会で消費する人々、近代的工場群と深刻化する環境破壊、頻発する社会紛争と強大化される公安組織など。
中国の「光と翳」は、「光」が「翳」を生み、「翳」が「光」を支えるという一体構造となって高度成長の強大な推進力となってきた。
「光」のみに目をくらまされることなく、「翳」にのみ詠嘆や憤激することなく、「光と翳」の全体構造を分析し、理解することで、「大国中国」の素顔が見えてくる。