梵語学界では省みてこられなかった諸種悉雲章の詳細な読み解きにより国語史の重要な一面と、語学発生の契機を解明する!
悉曇章は8〜9世紀、中国及び日本で行なわれた梵語の音韻表と綴字表とが1図になったものである。仏教の伝来に伴い梵語は日本にも知られる様になったが、殊に平安初期渡来の新仏教は真言・陀羅尼を梵語のままに発音することを重視したため新仏教請來のために渡唐した日本の僧達は、皆、唐土において梵語の学習に精励し、そのテキストとしての悉曇章を将来した。その後、その大半は散佚したが、その中で、唯一現存している円仁将来の安国寺本、及び渡来時の姿を忠実に残していると認められる円仁将来の全雅本、円珍将来の智証大師本、その他の諸悉曇章を紹介し、そこに書き加えられた朱書を紹介し、綿密に解明した。これによって、国語史上の難問の一端を明らかにし、又、日本における語学発生の契機を探らんとする。