文学の低迷・閉塞の状況が叫ばれてから既に久しい。ここに小田切秀雄全集を刊行する意義は、新しい二十一世紀に向けて、文芸・芸術の世界に風穴をあける試みにほかならない。戦争、革命、転向、「社会主義」国の消滅、情報化社会などにくっきりと彩られた、二十世紀を批判的に底から掬いあげなおす、みごとで卓越した感受性と思考の輝きが各巻には篭められていると確信している。1934年から今年まで60数年間の著者の文章をおさめたこの全集が1つの貴重で基本的な「古典」として手にとられることを衷心より望んでいるのである。(『小田切秀雄全集』刊行の言葉、2000年夏)