中国の東端の杭州湾。その湾に毎年9月なかごろ、東海から猛烈な高潮がおしよせ、「天下の奇観」とほめそやされた。
当地の言い伝えによると、この高潮は春秋時代(紀元前722〜403年)に存在した伍子胥の怒りが引き起こしているという。当時、呉と越の国は杭州湾に流れこむ銭塘江を挟んで南北対峙し、復讐戦争をくりひろげていた。伍子胥は呉越の敵対関係を悪化させ、二国を壮絶な戦争へとかりたてた張本人であった。
この二国の敵対関係は『史記』、『呉越春秋』、『国語』、『越絶書』といった歴史書に描かれているが、呉王夫差に敗北した越王勾践が「会稽の恥」を忍んだ話、「臥薪嘗胆」して報復の機会を狙った話、さらに西施という絶世の美女も登場し、いっそう錯綜したドラマが展開する。