社会の矛盾に憤慨しながら自我に目覚めて成長していく朝鮮留学生李寅華――インテリ青年の鬱憤吐露と新生模索の旅の物語。
主人公は妻を残して日本で大学生活を送っていた。東京にいる限り、大して差別を感じることもなく、故国の因習も忘れて、カフェガールの静子との会話も楽しんでいたのだが…。
「京城」(ソウル)の家に帰ってみると、産後の肥立ちの悪かった妻は、西洋医を信じない父のため、漢方薬しか与えられずに息を引き取る。夫婦らしい情愛も知らずに死んでしまった妻に彼は初めて涙する。静子から手紙が来たが、結婚はできないと思う寅華だった。時あたかも第一次世界大戦も終わりを告げていた。お互い、新生を模索するのだ!
社会批判意識と、人生に対するニヒリズムと、それからの脱却の過程が絶妙に配合された朝鮮近代小説の最高傑作!