歴史的人間学とは、伝統的な規範が拘束力を失った今、人間的な諸現象を多様に、トランスナショナルに学科横断的に研究し続ける努力、止むことのない思考の活動性である。
初めて本格的に編まれた人間学事典の完訳版。
(全三巻)
本書で取り上げられるいずれの事象も、かつて哲学的人間学のように「・・・・とは何か」といった超歴史的・規範的立場からではなく、ある特定の文化において、ある特定の時代において「・・・・はいかに語られてきたか」といった問題設定のもとで論が展開される。嗅覚や味覚といった、一見超歴史的なものと思えるような事象についてもこうした観点は貫かれ、各文化や各時代の文学作品や哲学書や民族誌などからその歴史性が明らかにされる。
本書は、人間をめぐる諸事情の多様性を我々に開示してくれるという意味で、読み物としても大変興味深いものだが、さらに各項目の末尾に付された文献目録によって、本書は各テーマについて今後研究を行おうとする研究者にとって重要な手引きになるだろう。