今回の第九号も、三五〇ページにおよぶ堂々の大冊となりました。前号同様、ご寄稿いただいた先生方、そして本誌を手にして下さった全ての方々に篤く御礼申し上げます。
今回の編集は、神鷹徳治先生と、前号に引き続いて静永がお手伝いさせていただきましたが、特に、前号に引き続き「座談会」を開催させていただいたことは、私個人にとりましても、大いなる刺戟となりました。前号の座談会では太田次男先生のお話を中心に、白居易研究の「過去・現在・未来」を見つめることに焦点を当てましたが、今回は、中国・清華大学の謝思助剞謳カをお招きして、特に「中国と日本のちがい」についてが話題の中心となりました。取り分け、日本と中国における文献の保存状況の違いについては、話題が宗教(特に仏教)に見える日中の差異というものにまで発展しています。この問題は、今後さらに深められて行くことを期待したいと思います。
収録論文も多彩です。謝先生の論文は、ただ単に白居易詩の解釈の問題にとどまらず、唐代の西南少数民族を考える上でも興味深いものです。林先生の論文は、唐詩に見える繰り返し表現についての幅広い視野からのものです。いずれもこれまでの「白居易研究」の枠を大きく打ち破るものと言えるのではないでしょうか。他にも、特筆すべき新しい分野の研究論文を多く収録させていただきました。文学研究のみならず、さまざまの分野で研究されている方々に本誌を読んでいただきたいと願っています。
静永 健【編集後記より】