ジンブンガクズイソウシュウ ニンゲンノキョウガイニツイテ

人文學隨想集 人間の境涯について

小堀桂一郎 著
ISBN 978-4-585-29185-5 Cコード 1095
刊行年月 2019年11月 判型・製本 A5判・上製 400 頁
キーワード 評論,哲学,思想,古典

定価:6,600円
(本体 6,000円) ポイント:180pt

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書籍の詳細

古今東西の言語・造形藝術・音楽に表現された人間の窮極の姿
『イソポ物語』『今昔物語』からデューラー『メランコリア』、ホーフマンスタール『イェーダーマン』…。
古今東西の説話・絵画・音楽に造詣のふかい碩学小堀桂一郎、珠玉の随想集。


【著者のことば】
『人文學隨想集 人間の境涯について』
「人間の境涯」とは、人間の社會的職業的羈絆や虛飾を一切洗ひ流し、その現存在を窮極の無一物にまで詮じ詰めた時に現れる姿である。どんな人にもその樣な極限の實存の姿がふと浮び上る時間的・空間的位相があるものだ。
さうした人間の限界的位相を訪ね求める旅の方便として、著者は古今東西の文學作品及び言語不通の柵に遮られぬ造形美術、時には音樂作品をも材料として、人々の表象する世界像を檢索する作業に携はつて來た。漫然たる道樂仕事ではあつたが、然し倦く事なく、樂しみながら孜孜として續けてゐた。
さうしてゐるうちに、本來の目標に達するための手段のつもりで集めてゐた材料自體が、何分優れた藝術作品といふ基準には叶ふものだから、如何にも面白い、魅力に富んだ寶藏の如き觀を呈することに氣がついた。
結果として、求めてゐた答よりも、答を導き出すために蒐集した材料を、先づひろげて人に見せたいとの欲求が表に出て來た。そこで御披露に及ぶことにしたのが本書を構成する諸章である。研究といふ樣な殊勝な志に出たものではないので題も隨想集とした。

 

 

目次
◎人間の境涯について―滅びの象限としての時間と空間
 序 メディチ家のカペレ・憂鬱(メランコリア)の造形/ミケランジェロの鼠/「二鼠競争」・無常迅速の諦觀/穴の中の男・顚落の空間/結び

◎タナトスの顔―古代人の想像力が生んだ「死」の姿
 序章/第一部 古典のテキストに添つて/第二部 十八世紀の評論家達と造形美術/あとがき

◎「黄金時代」考―敵か味方か、「傳統」と「前衞」の間
 序章―Et in Arcadia ego/本論―ハリー・ケスラー伯『日記』を視點として

◎「三人の友」の話―「エヴリマン」説話の流傳の跡
 はじめに/一 出發点、假名草子本『伊曾保物語』/二 主題となる寓話の本文/三 寓話の出典について書誌學的に/四 寓意の解釋/五 寓話の流傳の旅/六 原点寓話群の構造/七 傳承の樣相/八 終着點としての『エヴリマン』劇/九 共通材源の類和

◎「三人の友の話」 補説・材源並に類話に就いての追補
 一 『雜阿含經』他/二 『ゲスタ・ロマノールム』/三 『エクセンプラ』/四 『ペトルス・アルフオンズス寓話集』/五 アラビア文學中の一例/六 平田篤胤『本教外篇』

◎古代に於ける時間秩序感覺―『古今集』巻頭の年内立春歌に就いて
 『歌よみに與ふる書』の衝擊/「年内立春」といふこと/「年内立春」は異例か/契沖の同情的評價

◎「伯の母」の話―歴史考察資料としての説話文學

◎夫婦の絆―『曠野』と『蘆刈』・『今昔物語』巻第三十の第四・第五話から
 はじめに/榮達の夫と零落の妻/玉の輿の妻と落魄の夫/「いたはり」と「廉恥」

◎「あとがき」に代へて―「正しさ」の喪失倫理問題としての国語表記問題
 中学時代の記憶/被占領下に生じた価値の顚倒/仄見えてゐる再生の曙光

初出一覧
プロフィール

小堀桂一郎(こぼり・けいいちろう)
1933年9月生まれ。東京大学・明星大学名誉教授。専攻はドイツ文学、比較文学、比較文化、日本思想史。
著書に『鈴木貫太郎―用うるに玄黙より大なるはなし』(ミネルヴァ書房〈日本評伝選〉、2016年)、『和辻哲郎と昭和の悲劇―伝統精神の破壊に立ちはだかった知の巨人』(PHP新書、2017年)、『靖國の精神史―日本人の国家意識』(PHP新書、2018年)、『象徴天皇考』(明成社、2019年)などがある。

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