叡山僧・首楞厳院沙門鎮源よって編まれた平安期を代表する説話集『大日本国法華経験記』(『法華験記』)。
文学、歴史、仏教研究の各分野において注目すべき内容を多く含む同書は、平安期の仏教信仰を窺い知るための史料、『今昔物語集』をはじめとする様々な説話集の関連文献として重視・珍重されてきた。
『法華験記』はいかに形成され、その説話からいかなる思想が透けて見えるのか。
成立の時代背景や環境、恵心僧都源信についての記述、畜生をはじめとする異類に対する功徳を説いた一連の説話群など多角的に検討し、形成の様相とその思想の特性を明らかにする。