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平安時代末期より戦国期にいたるまで長い命脈を保った備中国新見荘。東寺領であったことより東寺百合文書等に多くの文献史料が残り、また、中世村落の景観を垣間見ることのできる環境を有する日本中世史研究における稀有なフィールドである。本書では文献資料の分析を軸に政治史・経済史・環境論・古文書学等にまたがる多面的な検証により、生産・流通、自然環境、地域社会、支配構造など、中世荘園をめぐる歴史的状況を立体的に描き出す。
海老澤衷(えびさわ・ただし)1948年生。早稲田大学文学学術院教授・文学研究科長。専門は日本中世史。主要著書に、『荘園公領制と中世村落』(校倉書房、2000年)、論文に、「中世における水田開発と鉄生産―備中国新見荘の場合―」(『水の中世―治水・環境・支配―』(高志書院、2013年)、「文化的景観の危機と再生―東アジアの村落景観をめぐって―」(WASEDA RILAS JOURNAL NO.1、2013年)などがある。高橋敏子(たかはし・としこ)1955年生。東京大学史料編纂所准教授。専門は日本中世史。主要論文に、「中世の荘園と村落」(近藤成一編『日本の時代史9 モンゴルの襲来』(吉川弘文館、2003年)、「若狭国太良荘の地下来納」(『南山経済研究』19-3、2005年)、「「東寺長者補任」の類型とその性格」(東寺文書研究会編『東寺文書と中世の諸相』思文閣出版、2011年)などがある。
「日本歴史」第806号(2015年7月号)にて、本書の書評が掲載されました。(評者:渡邊太祐(三井化学株式会社))