文字の「正しさ」は如何に規定されてきたか
「字様」とは字形、字音などの類似によって錯誤に至る可能性のある楷書を広く弁別するために撰述された典籍である。日本最古の漢籍目録『日本国見在書目録』や日本撰述の古辞書の注文にも数点が確認される。「字様」は、主に隋・唐代に盛行し、科挙制度とも深く結びつきながら、「開成石経」にまで至る楷書字形のあるべき姿を決めていった。
一方で、「正しさ」が規定される中で、所謂通行字体としての「俗体」という概念を浮かび上がらせていく。
隋・唐代における文字への意識の体系を、実証的研究により明らかにしていく刺激的な一書。文・史・哲すべてに関わる重要な研究成果。