「守覚法親王と仁和寺御流の文献学的研究」を平成10年に刊行したが、仁和寺蔵御流聖教の研究過程において、守覚の著作および御流の聖教が大量に金沢文庫保管称名寺聖教中に伝存している事が明かになった。仁和寺において守覚法親王がその生涯を費やして創り上げた“御流”の一大体系が鎌倉時代末期には関東に移転している様相が知られた。金沢文庫古文書等により、その背景も解明され、当時の朝廷と幕府の間の政治的な緊張関係がこれと密接に絡んでいる消息も窺われる。第一部は、称名寺聖教中の御流聖教について全体の目録を提示し、その奥書識語を載せ、第二部は、金沢文庫の御流聖教中でも屈指の文献である「二十二巻本表白集」を全文翻刻・紹介し、解説・目録・作者一覧を付した。