日本「文」学史3
ニホンブンガクシ ダイサンサツ

日本「文」学史 第三冊 A New History of Japanese “Letterature” Vol.3

「文」から「文学」へ―東アジアの文学を見直す The Path from “Letters” to “Literature”: A Comparative History of East Asian Literatures
河野貴美子・Wiebke DENECKE・新川登亀男・陣野英則 編
ISBN 978-4-585-29493-1 Cコード 1095
刊行年月 2019年5月 判型・製本 四六判・並製 632 頁
キーワード 漢文,比較文学,和歌,古典,アジア,近現代,近代,近世

定価:4,180円
(本体 3,800円) ポイント:114pt

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書籍の詳細

かつて東アジアに展開した文化史上の重要概念である「文」の解体、そして、西欧との出会いによりもたらされた「文学(literature)」への移行は、東アジア全体に及ぶ大きなパラダイム転換であった。そして現在、「文学」「人文学」の枠組みそのものが問い直されるに至っている。
これら転回の画期に、いったいどこで、何が起こっていたのか。【近世化】【近代化】という社会・文化の大変革の時期における「文」そして「文学」のありようを広く東アジア世界に探り、「文」の概念史を描き出すことで、現在そして未来へと続く「知」と「文化」の継承と展開への視点をしめす。
これからの人文学を切り拓く新たな視角【近世化】【近代化】を経て【現代】へと―東アジア世界における「文」の概念はいかに変容・展開していったのか。
日中韓そして欧米における48の知を集結し、描き出される初めての東アジア比較文学史。

 

 

目次
序 言 Wiebke DENECKE/河野貴美子

第一部 【近世化】―社会の変化と「文」の変革
序 章 Wiebke DENECKE/河野貴美子
第一章 国家、社会と「文」
 ①日本 日本「文」学に近世化をもたらしたもの─経済の与えた影響を中心に 染谷智幸
 ②中国 中国「文」学の近世化─科挙制度と文学観変容の視角から 張伯偉(姜若冰訳)
 ③韓国 近代以前の韓国における国家、社会と「文」 沈慶昊(金子祐樹訳)
第二章 戦争と「文」
 近世東アジアの戦争と文学 孫衛国(張宇博訳)
第三章 学問と「文」
 ①日本 和文の文章論と和文集 田中康二
 ②中国 中国近世の学と道と文 土田健次郎
 ③韓国 近代以前の韓国における知的活動と「文」 沈慶昊(金子祐樹訳)
第四章(1) ことば、翻訳、vernacularization
 ①日本 日本の近世化における言語発見と俗語訳 レベッカ・クレメンツ
 ②中国 白話の歴史的変遷─時代・文体・語彙 千葉謙悟
 ③韓国 韓国における翻訳文化の近世化への旅程 権仁瀚(金東建訳)
第四章(2) 文体、韻文/散文
 ①日本(散文) 近世の散文─和文、漢文 鈴木健一
 ②日本(韻文) 江戸後期における和歌表現の進展 ユディット・アロカイ
 ③中国 中国における文体の混用と変遷 金 文京
 ④韓国 「文」の近世化過程と朝鮮風の開眼―〝その時の其処〟から〝今の此処〟へ 鄭珉(倉橋葉子訳)
コラム1 紀行文
 ①日本 近世の紀行文と『奥の細道』の近世性  佐藤勝明
 ②中国 「永州八記」から『徐霞客遊記』まで  内山精也
 ③韓国 日常を超え、広い世の中へ   金龍泰(朴利鎮訳)
コラム2 劇場、芸能と「文」「声」
 ①日本 近世の劇場文化の「文」  児玉竜一
 ②中国 中国「戯曲」の音楽と物語  岡崎由美
 ③韓国 韓国の公演空間と「文」・「声」の伝統演戯︱パンソリ・仮面劇・人形劇を中心に  宋 美敬(魯耀翰訳)
コラム3 印刷文化・写本文化
 ①日本 写本を目指した版本―「光悦謡本」をめぐって  佐々木孝浩
 ②中国 中国の一例   陳正宏(陸賽君訳)
 ③韓国 「活字の国」の写本  宋好彬


第二部 【近代化】―東アジアの「文」から「文学」への道
序 章 Wiebke DENECKE/河野貴美子
第一章 国家、社会と「文学」
 ①日本 移動の時代の日本文学―交通革命と空間、情報の再編 日比嘉高
 ②中国 「大いなる時代」の「中国近現代文学」 王暁明(楊駿驍訳)
 ③韓国 近代韓国における「文」と「文学」、その競合と移行の軌跡 黄鎬徳(金景彩訳)
第二章 戦争と「文学」
 ①日本 尹伊桑と戦争―「音楽言語」と日本との交響 中山弘明
 ②中国 現代の中国文学と戦争 陳思和
 ③韓国 記憶と解析としての文学―戦争体験と韓国近代文学 韓壽永(田島哲夫訳)
第三章 学問と「文学」
 ①日本(「文学」史からみる) 明治期の「文学」史 陣野英則
 ②日本(全集、雑誌からみる) ジャーナリズムとアカデミズム 宗像和重
 ③中国 中国における「文」と「文学」 川合康三
 ④韓国 「学文」から「文学」へ 權ボドレ(尹喜相訳)
第四章 ことば、文体
 ①日本 「しばらく」の文学史―二葉亭四迷を中心に 谷川恵一
 ②中国 文学翻訳と中国現代文学 王宏志(段書暁訳)
 ③韓国 韓国における近代文体の成立 金栄敏(金昭賢訳)
第五章 新しいメディアの時代と「文学」
 ①日本 新聞雑誌の登場と文・文学の近代 土屋礼子
 ②中国 新メディアの(ための)時代―中国における「文」学の公共圏 バーバラ・ミトラー
 ③韓国 新しいメディアと韓国近代文学の形成 千政煥(高榮蘭訳)
コラム4 教育における国語・国文学
 ①日本 近代文学研究はいかにして高等教育に進出したのか?  石川巧
 ②中国 「国文」「国語」から「語文」へ  王風(陳琦訳)
 ③韓国 教科書にみる近代の韓国語と韓国文学  崔賢植(金昭賢訳)


第三部 【現代の「文学」】―文学の現在と人「文」の将来
序 章 Wiebke DENECKE/河野貴美子
第一章 現代の「文学」
 ①日本(戦後) 戦後文学史における「文」の展開 鳥羽耕史
 ②日本(現代) 現代日本の「文」―その無限の広がり 松永美穂
 ③中国 「文」から見た近現代の「文学」 千野拓政
 ④韓国 一九四五年太平洋戦争終結後の韓国文学史 咸燉均(朴愛花訳)
第二章 近現代の文・史・哲と人文学
戦後現代の課題 新川登亀男

あとがき 河野貴美子/Wiebke DENECKE
執筆者一覧
プロフィール

河野貴美子(こうの・きみこ)
早稲田大学文学学術院教授。専門は和漢古文献研究。

Wiebke DENECKE (ヴィーブケ・デーネーケ)
ボストン大学教授。奈良・平安和漢比較文学、日・中・韓古典文学、漢字文化圏の比較文学。

新川登亀男(しんかわ・ときお)
早稲田大学名誉教授。専門は日本古代史。

陣野英則(じんの・ひでのり)
早稲田大学文学学術院教授。専門は平安時代文学、物語文学。

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