ちりめん紙に彩られた日本昔噺の世界を全編原色原寸で公開。
英・仏・伊・露・独・葡・瑞・西の各国語、計92種を集成した決定版。
日本出版文化史・異文化交流史における重要資料。
ちりめん本は、ちりめん紙に印刷された他に類を見ない特殊な書物で、明治の出版人長谷川武次郎によって初案されたと考えられる。
武次郎はその類希なる人脈を活用し、チェンバレンやハーンなどのお雇い外国人や外交官夫人などに翻訳・執筆を要請し、日本昔噺をはじめ、日本の風俗や年中行事、生活慣習、子供の遊びなどを、美しい彩色の挿画を入れて、仏語、独語、スペイン語、ポルトガル語など、世界へ向けて紹介した。
ちりめん本は昭和30年ぐらいまでは制作が確認されるが、それ以後は特殊な技術の継承者がなく、また主として海外向けに作られたものだけに、国内に伝存するものも稀少で、その存在すら知られていないものも少なくない。
本書は、これらの稀少なちりめん本のうち、長谷川の出版物として主要な位置を占める日本昔噺シリーズについて、管見の限りの各国語版全編を原寸原色で影印し、後世に残し、伝えていくものである。これほど多くのちりめん本を収載するちりめん本資料集成は、今まで他に例はなく、今後のちりめん本研究はもとより、明治出版文化史、初期語学教育、版画史、装幀美術等々の研究に資するものであろう。
・本書の特徴
◎長谷川武次郎により出版された「ちりめん本」のうち、特にその主要な出版物である「日本昔噺」について、管見の限りの各国語版を全編、原色原寸で影印。
◎英語・フランス語・イタリア語・ロシア語・ドイツ語・ポルトガル語・スペイン語の計92種を収載。このようなかたちで纏まった形でちりめん本日本昔話輯の全貌を公開するのは史上初。
◎附録として、カタログ3種を附した。長谷川武次郎の出版の動向、流通のあり方がうかがえる重要資料。