濃彩色で描かれた江戸前期狂言の実態を示す貴重資料
狂言は演出に関する古い文献資料がほとんどなく、絵画資料は当時の演出を知る上で重要な手がかりになる。本『狂言絵』は、濃彩色のやまと絵で描かれた六〇図よりなり、《養老(薬水)》《釣針》《宝の笠(隠笠)》《泣尼》《早漆(塗付)》の他に類例のない演目や、《六人僧》などの稀曲が含まれ、《棒縛》《二人袴》など現行と異なった演出の図柄も見られる。江戸前期における狂言の実態を視覚化したものとして、大変貴重な資料である。
全編をフルカラーで影印、諸本を博捜し、同書の位置付けを示す解題ならびに各曲解説を附した。