トコウソウジョウジン アメヲイノル

渡航僧成尋、雨を祈る

『僧伝』が語る異文化の交錯
水口幹記 著
ISBN 978-4-585-22054-1 Cコード 1020
刊行年月 2013年6月 判型・製本 四六判・上製 376 頁
キーワード 伝記,交流史,宗教,中国,東アジア,日本史,平安,中世

定価:3,850円
(本体 3,500円) ポイント:105pt

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書籍の詳細
語り語られることの歴史学

平安後期に中国へ渡り、彼の地で生涯を終えた天台僧「成尋」。
皇帝より要請された祈雨を成功させ、大師号を賜ったその功績は、中国で華々しく活躍した先達として、日本の数々の高僧伝において取り上げられている。
しかし、中国側史料には、この一連の祈雨成功については一切語られていなかった。
成尋の書き残した渡航日記『参天台五臺山記』、そして中国側史料を精査することで見えてきたものとはいったい何か・・・。
語り、語られることで交錯する異文化の諸相を立体的に捉え、文化・歴史とは何かを再考する新たな歴史学。

 

 

目次
はじめに―三本の柱―

第一章 『参天台五臺山記』と成尋祈雨
一 成尋と『参天台五臺山記』
 成尋の生没年 /成尋の家系 /密航の事情 /『参天台五臺山記』
二 『参天台五臺山記』に残る成尋祈雨成功譚
 祈雨の要請―熙寧六年三月一日。晴れ。 /祈雨の開始―三月二日。晴れ。 /成尋の決意―三月三日。晴れ。 /祈雨の成功―三月四日。晴れ、のち雨。 /連日の雨―三月五日・六日 /事後処理の相談―三月七日。晴れ。 /謝雨の掲示―三月八日。晴れ。 /宮中でのくつろぎの時―三月九日・十日。共に晴れ。 /ついに結願―三月十一日。晴れ。 /退朝後の日々―三月十二日~十九日 /続く祈雨の余韻―三月二十日~三十日 /成尋への賜号―四月一日~四日 /残る謎

第二章 日本古代の祈雨―日本から見た成尋祈雨(一)
一 日本古代の祈雨の諸相
 成尋と行事大保との問答 /様々な祈雨―皇極紀の記事 /様々な祈雨―殺牛祭祀 /様々な祈雨―市を移す /神と自然との関係 /六国史から見る祈雨の傾向
二 空海祈雨成功譚
 成尋の語る空海 /神泉苑の誕生 /遊園としての神泉苑 /自然豊かな神泉苑 /宗教的霊場としての神泉苑 /天長の空海の祈雨 /空海祈雨成功譚の成立 /『御遺告』の空海祈雨成功譚 /修円僧都との験くらべ

第三章 成尋の東密修法への関心―日本から見た成尋祈雨(二)
一 成尋の修した祈雨法
 成尋の不安 /成尋が修した祈雨法 /使用した道具類―天蓋・幡 /使用した道具類―茅青龍 /使用した道具類―白芥子・黄色浄衣
二 請雨経法への関心
 請雨経法での支度―青の意識 /覚禅の疑問 /雨僧正仁海 /成尋の見た祈雨 /赤龍・青龍、天に上る /日本から見た成尋祈雨

第四章 中国古代の祈雨―中国から見た成尋祈雨(一)
一 六朝時代までの祈雨
 中国史料の中の成尋 /「舞」による祈雨 /傷身系祈雨 /陰陽論理の導入 /土龍を造る /梁の武帝の七事
二 隋・唐・五代の祈雨
 令制・礼制としての祈雨 /龍にまつわる事々 /龍を投ず /唐・五代の傷身系祈雨 /仏教の傷身系祈雨 /成尋の読んだ唐代祈雨

第五章 宋代の祈雨と仏教―中国から見た成尋祈雨(二)
一 宋代の祈雨
 宋の建国と祈雨 /李邕祈雨法 /画龍祈雨法 /蜥蜴祈雨法 /聖なる鰻 /蜥蜴祈雨法の伝播 /傷身系祈雨と巫覡の禁止
二 祈雨と観音信仰
 『墨荘漫録』に載る普陀山祈雨 /作者張邦基について /北宋末から南宋の祈雨と観音信仰 /祈雨と『観音経』 /杭州の上天竺寺 /上天竺寺と祈雨 /寧波の祈雨と観音信仰 /再び普陀山祈雨について /続く観音信仰
三 北宋の仏教的祈雨作法
 成尋祈雨は特殊か? /成尋祈雨の作法 /中国史料との照合―①―⑥ /中国史料との照合―⑦―⑪ /成尋祈雨の非特殊性

第六章 成尋の夢と『参天台五臺山記』
一 成尋の見た夢
 残された疑問 /成尋の見た夢 /夢を見た時間 /夢を見る特権者 /『日本霊異記』の夢 /夢の中での出会い
二 成尋の「夢記」
 「夢記」と夢解き /『日蔵夢記』 /一枚文書としての「夢記」 /『明恵上人夢記』 /円珍の夢 /『参記』の夢の記述方法

第七章 成尋伝の生成と展開
一 成尋伝の生成
 成尋への関心 /様々な成尋伝 /『大雲寺縁起』への疑義 /『続本朝往生伝』の成尋伝 /祈雨記事の伝的要素(1)―確認と補足 /祈雨記事の伝的要素(2)―三日と夢
二 成尋伝の展開
 日記を書くこと /渡航記を書き残すこと /心覚『入唐記』の成尋 /伝えられる祈雨の情報

おわりに―個人の著作を読むこと―

参考文献
あとがき
索引
プロフィール

水口幹記(みずぐち・もとき)
立教大学文学部助教。専門は日本古代史・文化史・文学。
著書に『日本古代漢籍受容の史的研究』(汲古書院、2005年)、藤巻和宏編『聖地と聖人の東西』(共著、勉誠出版、2011年)、小峯和明編『〈予言文学〉の世界―過去と未来を繋ぐ言説―』(アジア遊学159号、共著、勉誠出版、2012年)、訳書に黄俊傑著『東アジア思想交流史―中国・日本・台湾を中心として―』(共訳、岩波書店、2013年)などがある。

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