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寺社文化圏や唱導との関わりの中から、多くの作品が生み出されてきた能楽。能作品には、中世の寺社のありようや信仰、学問、宗教文化が反映されているが、その宗教的な背景は、未だ充分に明らかにされていない部分が多い。中世日本の宗教的な知は、どのように能楽に流れ込み、作品世界を形成していったのか。能作品や能楽論の中の仏教や神祇に関わる面を掘り下げることで、宗教芸能としての能楽について考えるとともに、能を通して、室町の宗教文化の一端を明らかにする。
高橋悠介(たかはし・ゆうすけ)慶應義塾大学附属研究所斯道文庫准教授。専門は日本中世文学・寺院資料研究。主な著書・論文に『禅竹能楽論の世界』(慶應義塾大学出版会、2014年)、「『諸社口決』と密教的社参作法の展開」(『中世に架ける橋』森話社、2020年)、「身体生成をめぐる思想と中世仏教―五蔵観・魂魄・胎内説」(『日本宗教史3 宗教の融合と分離・衝突』吉川弘文館、2020年)などがある。