『源氏物語』における漢詩文表現の意義とは何か
漢詩文の学識を備えた紫式部の著した『源氏物語』には、多くの漢詩文が典拠として用いられるとともに、物語独自の表現としての漢詩文をもみることができる。
作中人物の詠む漢詩文や催す詩宴から、作中人物の漢学や漢詩文の素養、出典・引詩文までを「漢詩文表現」として体系的に論じ、漢詩文が物語の主題や構想、表現の形成にいかにかかわっているのかを明らかにする。
また、他の物語文学が描出しえなかった政治や社会、人間の生き方の諸相などを描出する方法として漢詩文が機能していたことを提示する。