イアンフモンダイノゲンセツクウカン

「慰安婦」問題の言説空間

日本人「慰安婦」の不可視化と現前
木下直子 著
ISBN 978-4-585-23055-7 Cコード 3036
刊行年月 2017年3月 判型・製本 A5判・上製 304 頁
キーワード 社会学,東アジア,日本史,昭和,近現代

定価:4,620円
(本体 4,200円) ポイント:126pt

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書籍の詳細
政治とナショナリズムに現れる権力に迫り痛みの痕跡から歴史を捉え直す

〈従軍慰安婦問題〉が1990年頃に日韓の政治的な問題として表面化した一方で、日本人「慰安婦」は「加害国の被害者」という立場ゆえこれまで可視化されていなかった。
雑誌や新聞記事などのメディア表象や運動資料を分析し、「慰安婦」を語る言説が、「被害者」「加害者」像を形成し、忘却を伴いつつも、「慰安婦」問題をいかに構築していったのか、その過程を明らかにする。
さらに、城田すず子ら当事者たちの残した手記を手がかりに、暴力的な出来事を経て、彼女らがどのような戦後を生きてきたのかを浮かび上がらせる。

 

 

目次
はじめに
序章 「慰安婦」問題へのアプローチ
1.「慰安婦」問題再考―日本人「慰安婦」に注目して
2.日本人「慰安婦」をめぐる議論
3.「慰安婦」制度をめぐる先行研究
4.本書の構成

第1部 〈従軍慰安婦問題〉の構築
第1章 戦後の「慰安婦」言説―社会問題化以前
1.「慰安婦」の記憶と〈強制連行〉の問題化
2.国会で語られた「慰安婦」
3.ルポルタージュの登場
第2章 言説空間の拡大―社会問題化の諸相
1.韓国フェミニズム運動による告発と社会問題化
2.新聞・雑誌にみる〈従軍慰安婦問題〉
3.政治・外交問題としての〈従軍慰安婦問題〉
4.言説空間の振り返り

第2部 社会運動の「慰安婦」言説
第3章 一九七〇―八〇年代フェミニズム運動の「慰安婦」言説
1.〈加害者〉日本人の主体化
2.ウーマン・リブ運動の「慰安婦」テクスト
3.侵略=差別と闘うアジア婦人会議の「慰安婦」テクスト
4.サバイバー被害者=生存者への想像力
第4章 「慰安婦」問題解決運動の言説空間―一九九〇年代初頭を中心に
1.運動の言説空間と日本人「慰安婦」
2.運動関係者が経験した〈従軍慰安婦問題〉

第3部 日本人「慰安婦」の被害をとらえる
第5章 日本人「慰安婦」被害者の語り
1.日本人「慰安婦」被害者の語り
2.城田すず子のテクスト
第6章  日本人「慰安婦」の被害者性
1.被害を不可視化するメカニズム
2.ナショナリズムと性を再び問う
補 論

参考文献
あとがき
プロフィール

木下直子(きのした・なおこ)
日本学術振興会特別研究員PD(大阪大学)。特定非営利活動法人社会理論・動態研究所研究員。九州大学大学院比較社会文化学府単位修得退学(2012年)、博士(2013年)。
主な論文に、「聴きとられなかった言葉をめぐって―日本人「慰安婦」に関するフェミニズムの議論の批判的検討」(『理論と動態』社会理論・動態研究所、第7号、2014年)、「フェミニズム運動にとっての日本人「慰安婦」―1970年代ウーマン・リブのテクストを中心に」(チョングンシク・直野章子編『記憶と表象から読む東アジアの20世紀』花書院、2014年)などがある。

書評・関連書等

「図書新聞」(2017年7月1日)にて、本書の書評が掲載されました。(評者:牧野雅子(大阪府立大学人間社会システム科学研究科客員研究員))

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