サハゴブンポウ

サハ語文法

統語的派生と言語類型論的特異性
江畑冬生 著
ISBN 978-4-585-28049-1 Cコード 3087
刊行年月 2020年4月 判型・製本 A5判・上製 264 頁
キーワード 言語

定価:10,780円
(本体 9,800円) ポイント:294pt

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書籍の詳細

日本の真北にあたる東シベリアで話されているチュルク系言語であるサハ語。長年のフィールド調査による記述研究から、一見すると複雑なサハ語の形態音韻交替や形態統語法を言語研究一般へも資する形で整理する。
統語的派生、二重対格使役文、非人称受動文などの言語類型論的な特異性にも注目。サハ語の初の記述研究書!

 

 

目次
はじめに 本書の特色・構成・データと出典

図表一覧
略号一覧

第1章 サハ語の概要
1.1. 現在の言語状況と系統
1.2. 音韻の概要
1.3. 母音調和
1.4. アクセント
1.5. 品詞分類の概要
1.6. 形態法の概要
1.7. 統語法の概要
コラム1:[k]と[x]は同一音素の異音であるか

第2章 形態音韻交替
2.1. 交替の生じる場所と要因の整理
2.2. 音韻的要因による接辞の交替
2.3. 音韻的要因による語幹の交替
2.4. 形態的要因による接辞の交替
2.5. 形態的要因による語幹の交替
2.6. 接辞に生じる不規則交替
2.7. 語幹に生じる不規則交替
2.8. 語幹の分類と母音脱落語幹
2.9. トゥバ語における交替との対照
2.10. 本章のまとめ
コラム2:bultaa「狩る」は bult + -aa と分析可能か?

第3章 名詞類の形態統語法の概要
3.1. 名詞形態法の概要
3.2. 名詞語幹に付加する屈折接辞
3.3. 名詞語幹に付加する派生接辞
3.4. 数詞語幹に付加する接尾辞
3.5. 名詞統語法の概要
3.6. 本章のまとめ
コラム3:複数接辞と3 人称複数所有接辞の連続

第4章 動詞の形態統語法の概要
4.1. 動詞形態法の概要
4.2. 動詞語幹に付加する屈折接辞
4.3. 動詞語幹に付加する派生接辞
4.4. 動詞統語法の概要
4.5. 本章のまとめ
コラム4:再帰代名詞beje「自身」および全部代名詞barï「皆」を含む
     句における1・2 人称所有接辞の振る舞い

第5章 主節述語に付加する接辞と文末接語
5.1. 主節述語の構造の概要
5.2. 文の種類を表す屈折接辞
5.3. 対事的モダリティの文末接語
5.4. 対人的モダリティの文末接語
5.5. 文末接語の分類と形態統語的振る舞いの相関
5.6. 本章のまとめ
コラム5:所有接辞の非句末形は属格の痕跡と言えるか

第6章 語彙的派生と統語的派生
6.1. 統語的派生の類型論的特異性
6.2. 名詞類から名詞類への派生
6.3. 名詞類から動詞への派生
6.4. 動詞から名詞類への派生
6.5. 動詞から動詞への派生
6.6. 語彙的派生・統語的派生・屈折の連続性
6.7. 統語的派生の解釈と位置づけ
6.8. 本章のまとめ
コラム6:サハ語文法に「双数」の文法概念は必要であるか

第7章 名詞類の分類と統語機能
7.1. 従来の名詞類分類における問題点
7.2. 名詞語幹の名詞句機能・連体修飾機能・副詞句機能
7.3. 統語機能から見た単純語の分類
7.4. 統語機能から見た派生語の分類
7.5. 句および節の統語機能
7.6. 接辞付加による統語機能の単一化
7.7. 本章のまとめ
コラム7:proprietiveの接尾辞-LEEx の多機能性

第8章 ボイス接辞による派生と非典型的構文
8.1. サハ語のボイスの概略
8.2. 使役文:二重対格使役を中心に
8.3. 受動文:非人称受動を中心に
8.4. 再帰接辞と逆使役接辞の区別
8.5. 本章のまとめ
コラム8:母音語幹動詞と子音語幹動詞

第9章 目的語の形式選択に関わる要因
9.1. 目的語として現れる3 種の形式
9.2. デフォルトとしての対格標示
9.3. 分格標示の成立条件
9.4. はだか名詞形目的語の成立条件
9.5. 系統的・地理的に見た分格
9.6. 本章のまとめ
コラム9:名詞語幹の単数主格形とはだか名詞形の違い

第10章 サハ語の特質
10.1. 形態音韻交替の規則性と全面性
10.2. 名詞類の分類と統語機能
10.3. 名詞類の形態統語法と動詞の形態統語法
10.4. 統語的派生と語彙的緊密性
10.5. 系統的・地理的に見たサハ語

参考文献
あとがき
附録 主な屈折接辞と活用表
用語・言語名索引
プロフィール

江畑冬生(えばた・ふゆき)
1977年生まれ。新潟大学人文学部・准教授。専門は言語学、チュルク諸語研究(特にサハ語およびトゥバ語を現地調査により研究)。2012年に博士論文『サハ語名詞類の研究―接辞法と統語機能を中心に』を東京大学大学院に提出し、博士号を取得。
主な論文に「サハ語(ヤクート語)の「双数」の解釈―聞き手の数からの分析」(『言語研究』151号、63-74)や「トゥバ語の証拠性を表すとされる接辞-dirの機能―話し手・聞き手の認識からの説明」(『北方言語研究』第9号、31-39)がある。

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