ワカノシガク

和歌の詩学

平安朝文学と漢文世界
渡辺秀夫 著
ISBN 978-4-585-29070-4 Cコード 3095
刊行年月 2014年6月 判型・製本 A5判・上製 568 頁
キーワード 漢文,比較文学,和歌,平安,中古

定価:14,300円
(本体 13,000円) ポイント:390pt

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書籍の詳細
和と漢の織り成す日本文化。その背景にある思想の枠組を描き出す

漢と和。日本文化がその相関のうちに形成されていったことはすでに言われて久しい。
それは一方的な文化流入の問題に収まらない、動的な授受・相補的関係のなかにあった。
漢詩と和歌、詩論と歌論のあいだを揺れ動く表現のあり方、東アジアの根幹たる儒教的礼学思想の日本的変容と勅撰和歌集編纂の関係、そして、平安朝物語文学の発生とともにあった漢文世界の意義。
和、そして内在化されていく漢が相互干渉的に綾を織り成していく様相を把捉し、日本文化形成の思想と方法を鮮やかに切り出す画期的成果。

 

 

目次
はじめに

第一部 和歌の詩学
和歌と漢詩のひびきあい
第一章 うたの詩学―藤原浜成『歌式』のこころみ―
 詩式の准用―音韻・声病と和歌の格式―
 歌体論―直叙の忌避と比喩の推奨―
 やまとうた技法の発見―聚蝶・謎警・古事・喩―
第二章 「野中ふるみち」―平安初頭史籍所載和歌一面―
第三章 王朝詩歌の表現位相―詩語とうたことば―
 はじめに
 〈秋のかげ〉
 〈冬の花・寒き花〉
 〈香れる雪〉
 〈雨の糸〉
第四章 紀貫之―うたことばの創造―
 はじめに
 母の歌集を編む
 詩からうたへ
 うたことばの創造
第五章 『新撰万葉集』論―上巻の和歌と漢詩をめぐって―
 はじめに
 「漢詩」をどう評価するか
 和歌と漢詩―歌の《本意》と詩の《本意》―
 『新撰万葉集』の文学的位相―上巻「序」の再検討―

和歌勅撰の思想
第六章 和漢比較のなかの古今集両序―和歌勅撰の思想―
 はじめに
 和歌勅撰の編纂動機―帝徳讃美と和歌―
 公宴詩の帝徳讃美―『古今集』のうちなる「礼楽」―
 両序末尾の対照―〝からぶみ〟(真名序)と〝やまとぶみ〟(仮名序)の表現位相―
第七章 〈うたのちから〉天地・鬼神を動かすもの―「礼楽」と「歌」―
 はじめに
 王の恵みと詩歌の繁盛―『古今集』序と『龍飛御天歌』序―
 天子の恩寵としての四時の調和―時令思想と『古今集』四季部―
 音楽論と和歌―「礼楽」のなかの「歌」―
 天人感応と音楽論―天地・鬼神を動かすもの―
第八章 古今和歌集序の〈文学史〉―和歌勅撰と「礼楽」―
 はじめに
 和歌とはなにか―「うた」の起源・発生論―
 和歌勅撰の原理―「うたのちから」と「歌徳」論と―
 和歌勅撰を支えるもの―「和歌風俗論」―
第九章 詩歌の発生論―「古今集序」の理解をめぐって―
 はじめに
 思想的枠組み―天(気)と人(情)との関係構造―
 心情の発動メカニズム
 古典解釈における中・近世
 古典解釈における〈近代〉をかえりみる
 むすびにかえて―礼の構造―
第十章 仮名散文の創出―古今集仮名序をめぐって―
 はじめに
 和文を支える漢文
 仮名ぶみの自立を育む漢文
 むすびに

第二部 物語・願文
第一章 漢文伝と史書と物語と―『恒貞親王伝』断章―
第二章 前期物語と漢詩文―〈漢文述作〉と〈物語を綴ること〉の間―
 はじめに―小説的世界の生成―
 漢文述作と古伝承―浦島説話の場合―
 漢文述作と物語―『竹取物語』―
 前期物語における漢詩文引用史の位相―『うつほ物語』と『伊勢物語』―
 むすびに―物語と漢詩文の「関係」再考― 310
第三章 漢文伝と唐代伝奇・物語―『続浦嶋子伝記』をめぐって―
 はじめに
 作者層―伝奇と漢文伝・物語―
 『続浦嶋子伝記』と『遊仙窟』・唐代伝奇
 (一) 『遊仙窟』の利用
 (二) 男女の愛情話(艶遇譚)―詩歌との相関(愛情詩/艶情と遊仙詩)―
 (三) 「艶詩」の挿入
 (四) 「性愛表現」と「好色」
 むすびにかえて―志怪・神仙譚から伝奇/物語へ―
第四章 太陽を還す話―『伊勢物語』のなかの漢文世界―
第五章 《家君》菅原是善の面影
第六章 願文―平安朝の追善願文を中心に―
 さまざまな願い―精神生活の写し―
 願文の内容―願文の段落構成―
 願文の制作―当事者性豊かな代作―
 願文の披露―悲嘆表現の変容―
 様式性のなかの創造―保胤の文体―
第七章 『法華経』と願文―『菅家文草』『本朝文粋』所収の願文を中心に―

補篇 和漢比較研究の視角―書評・紹介、翻訳―
ⅰ 松浦友久著『『万葉集』という名の双関語』―認識の方法としての日中比較詩学―
ⅱ 柳瀬喜代志著『日中古典文學論考』
ⅲ 本間洋一著『王朝漢文学表現論考』
ⅳ 李宇玲著『古代宮廷文学論 中日文化交流史の視点から』
ⅴ 〔翻訳〕 聞 一多「歌と詩」
 一 〔「歌」とはなにか―感情の発露・抒情性―〕
 二 〔「詩」とはなにか―記憶・記録・懐抱―〕
 三 〔韻文と散文―「歌」「詩」の融合と「史」の成立―〕
ⅵ 〔翻訳〕 朱 光潜『詩論』(抄訳)
 第一章 詩の起源
  一 詩歌と音楽、舞踏はその起源を一にする
  二 詩歌に保存された、もともと「詩、楽、舞」が一体であった痕跡
 第二章 詩と諧隠
  一 詩と諧
  二 詩と隠
  三 詩と純粋な言葉遊び

あとがき

初出一覧
中文要旨
英文要旨
書名・人名・事項 略索引
プロフィール

渡辺秀夫(わたなべ・ひでお)
1948年、神奈川県横浜市生。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程修了。文学博士(早稲田大学、1989)。早稲田実業学校国語科教諭(1972)。東横学園女子短期大学専任講師(1977)。信州大学人文学部助教授(1982)、教授(1992)、人文学部長・人文科学研究科長(2005~2013)。北京日本学研究センター派遣教授(1993 / 1998)。ワルシャワ大学東洋学部客員教授(1999)。ヤギェウォ大学文献学部東洋学研究所客員教授(2013)。信州大学名誉教授。
著書に、『平安朝文学と漢文世界』(勉誠社)、『詩歌の森―日本語のイメージ―』(大修館書店)、『岩波講座 日本文学史 第2巻 9・10世紀の文学』(岩波書店、共著)、『週刊朝日百科 世界の文学 23 古今和歌集・梁塵秘抄・和漢朗詠集…』(朝日新聞社、編著)、『古今和歌集研究集成 第一巻 古今和歌集の生成と本質』(風間書房、共著)ほか。

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