アレノノロクジュウネン

荒れ野の六十年

東アジア世界の歴史地政学
與那覇潤 著
ISBN 978-4-585-22264-4 Cコード 1020
刊行年月 2020年1月 判型・製本 四六判・上製 392 頁
キーワード 思想,日本史,近現代

定価:3,520円
(本体 3,200円) ポイント:96pt

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書籍の詳細
東アジアで共有できる歴史を―

かつてこの理想が追い求められた時代があった。
しかし、なぜ共有したいのだろう。やり過ごしあうだけではどうしていけないのだろう。
そうした欲求は、日清戦争の開戦から朝鮮戦争の休戦までの「荒れ野の六十年」が残した近代の爪痕にすぎなかったのではないか。この地域が抱える絶望的な摩擦の根源へ、古典と最新の研究の双方を対照して迫った先に見えてくる、あたらしい共存の地平とは。
不毛な論争に終止符を打つ、気鋭の歴史学者による最後の論文集。

 

 

目次
まえがき―廃墟に棲む人のために

Ⅰ 西洋化のとまった世界で―同時代への提言
 1 三つの時代と「日中関係」の終わり―今こそ読みなおす山本七平
  1 「終わりのはじまり」を見抜いた山本七平
  2 「進歩的知識人の蹉跌」の原型は江戸の儒者に
  3 東アジアに存在するのは「士大夫のナショナリズム」
  4 国家のリアリティが欠如した中国と日本
  5 「韓国モデル」は未来の解決策を示せるか

 2 再近世化する世界?―東アジア史から見た国際社会論
  はじめに
  1 リ・リオリエント―アジア時代のグローバル社会論
  2 民族とナショナリズム(の違い)
   (1) 東アジア史の知見:想像(されただけ)の共同体―ナショナリズムの不在と抑制
   (2) 今日的含意:「新人種主義」は(そもそも)存在したか?
  3 近代東アジアの国際的契機―朝貢外交システムと現代アジア
   (1) 東アジア史の知見:ヨーロッパ覇権以降―もうひとつの外交システム
   (2) 今日的含意:近世、未完のプロジェクト
  4 中華〈帝国〉―再近世化の世界秩序と東アジア思想の可能性
  おわりに

 3 中国化する公共圏?―東アジア史から見た市民社会論
  1 西洋史からモデルを作る―アレントとハバーマス
  2 東アジア史からモデルを作る(Ⅰ)―清朝中国
  3 東アジア史からモデルを作る(Ⅱ)―徳川日本
  4 世界史を描き直す―日本化から中国化へ?
  5 歴史から未来を描く―アジア市民社会像の新構築

 【補論Ⅰ】 社会の「支え方」の日中比較史
     ―陶徳民ほか編『東アジアにおける公益思想の変容―近世から近代へ』書評
  1 構造
  2 実践
  3 考察
  4 批判


Ⅱ 歴史のよみがえりのために―古典にさがす普遍
 4 革命と背信のあいだ―逆光のなかの内藤湖南
  1 中国を通じて語られる自画像
  2 一身にして二生を経ず
  3 唐宋変革・明治維新・辛亥革命―『支那論』
  4 漢籍の語で近代を評価する
  5 歴史の終わりを中国に見る―『新支那論』
  6 同病相憐れむアジア主義へ
  7 湖南研究の軌跡と現状

 5 史学の黙示録―『新支那論』ノート
  1 史論と時評―〈現在〉の視野から
   (1) 二〇一二年という終焉
   (2) 湖南の復権?
  2 『新支那論』の呪い―〈西洋化〉パラダイムの終焉
   (1) 問題としての『新支那論』
   (2) 批判者たちの論理
   (3) その陥穽と今日的状況の起源
  3 『支那論』からの視線―方法としての〈近世〉
   (1) 〈中国的民主主義〉としての近世論
   (2) 文化というニヒリズムへ
  4 未来としての中国―『新支那論』のなかの〈帝国〉
   (1) 国家なき社会をめぐって
   (2) 資本主義なき市場経済
   (3) 中国式ネオリベラリズム
   (4) アナーキカルな統治へ
   (5) 国家も民族もない土地で
  5 湖南の逆説―〈日本史〉の終幕へ
   (1) 進歩という幻影
   (2) 『新支那論』の反省

 6 変えてゆくためのことば―二十世紀体験としての網野善彦
  1 ことばと自由
  2 歴史と権力
  3 無縁と共産
  4 大陸と列島
  5 伝統と信念

 7 無縁論の空転―網野善彦はいかに誤読されたか
  はじめに―二人の幽霊
  1 「中世都市論」
  2 神田千里(松井輝昭・林文理)
  3 『無縁・公界・楽』
  4 永原慶二(義江彰夫)
  5 石井進(峰岸純夫)
  6 〈社会史〉(山口昌男)
  7 安良城盛昭
  8 樺山紘一
  9 阿部謹也
  10 中沢新一
  11 岩井克人
  12 小熊英二・赤坂憲雄
  おわりに―よみがえる幽霊

 【補論Ⅱ】 社会科学にとって歴史とは何か
     ―久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすゝめ』書評


Ⅲ もういちどの共生をめざして―植民地に耳をすます
 8 帝国に「近代」はあったか―未完のポストコロニアリズムと日本思想史学
  1 視界不良の時代
  2 マルクスからフーコーへ?
  3 山崎闇斎の逆説
  4 植民地近代の陥穽
  5 三島由紀夫が見た闇

 9 荒れ野の六十年―植民地統治の思想とアイデンティティ再定義の様相
  1 方法―「思想史」から植民地を問う
  2 前提―「自覚的に曖昧な秩序」としての東アジア近世
  3 発端―「十九世紀の危機」と伝統文明の失調
  4 葛藤―「自覚的に曖昧な秩序」への近代文明の侵攻
  5 転換―「中華世界」の再浮上と日本帝国との拮抗
  6 蹉跌―「中華帝国」との最終戦争と敗北
  7 総括―「中華になり損ねた帝国」の崩壊
  8 回帰―「自覚的に曖昧な秩序」としての戦後東アジア

 10 靖国なき「国体」は可能か―戦後言論史のなかの「小島史観」
  1 「史観」が問われた季節
  2 「史観」を語るのは誰か
  3 「史観」の起源にせまる
  4 比較史の技法としての「史観」
  5 靖国という「史観」を超えて

 【補論Ⅲ】 ノンフィクションに学ぶ、「中国化」した世界の生き抜き方


あとがき―収録作品解題
プロフィール

與那覇潤(よなは・じゅん)
1979年生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専門は日本近現代史。2007年から15年にかけて地方公立大学准教授として教鞭をとり、重度のうつによる休職をへて17年離職。歴史学者としての業績に『翻訳の政治学』(岩波書店)、『帝国の残影』(NTT出版)。在職時の講義録に『中国化する日本』(文春文庫)、『日本人はなぜ存在するか』(集英社文庫)。共著多数。
2018年に病気の体験を踏まえて現代の反知性主義に新たな光をあてた『知性は死なない』(文藝春秋)を発表し、執筆活動を再開。本書の姉妹編として、学者時代の時評と対談を中心に集めた『歴史がおわるまえに』(亜紀書房)がある。

書評・関連書等

★書評・紹介★
「朝日新聞」(2020年2月9日)の「折々のことば」にて紹介されました。
 →紹介者:鷲田清一(大阪大学、京都市立芸術大学名誉教授)
「日本経済新聞」(2020年2月15日)の「半歩遅れの読書術」にて紹介されました。
 →紹介者:佐藤卓己(京都大学教授)
「毎日新聞」(2020年3月1日)に書評が掲載されました。
 →評者:白井聡(京都精華大学専任講師)
「読売新聞」(2020年3月9日)に書評が掲載されました。
 →評者: 苅部直(東京大学教授)
「日本経済新聞」(2020年3月19日夕刊)に書評が掲載されました。
 →評者: 速水建朗(ライター)
「週刊 東洋経済」(2020年4月11日号)に書評が掲載されました。
 →評者:会田弘継(関西大学客員教授)
「公明新聞」(2020年4月27日・4面)に書評が掲載されました。
 →評者:岡本隆司(京都府立大学教授)

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