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中国王朝が自らの領域の全体を明示すべく、各地域の歴史とデータを集積し作り上げた総合的書物「一統志」。元・明・清において編まれたこれらの書籍は、東アジア諸国や欧州へも伝播し、近代の地誌・歴史編纂にも影響を与えるものであった。近代的領域認識の萌芽を体現するこれらの編纂物は、いかなる時代状況において作られたものであったのか。編纂前史から、王朝三代にわたり編纂されたそれぞれの「一統志」のあり方、周辺諸国や後代に与えた影響をも考察し、「一統志の時代」を浮かび上がらせる。
小二田章(こにた・あきら)早稲田大学文学学術院 講師(任期付)。専門は近世中国史、宋代以降の地方志編纂、東アジアの地方史誌。論文に「『咸淳臨安志』の位置―南宋末期杭州の地方志編纂」(『中国―社会と文化』28号、2013年)、「『大元一統志』「沿革」にみる編纂過程―平江路を中心に」(『宋代史から考える』汲古書院、2016年)、「『西湖志』にみる清初期杭州の地方志編纂―清朝の文化統治政策を中心に」(『東洋文化研究』21号、2019年)などがある。高井康典行(たかい・やすゆき)早稲田大学文学学術院・日本大学文理学部・東京都立大学人文社会学部非常勤講師。専門は契丹[遼]史。著書に『渤海と藩鎮―遼代地方統治の研究』(汲古書院、2016年)、論文に「契丹[遼]の東北経略と『移動宮廷(行朝)』―勃興期の女真をめぐる東部ユーラシア状勢の一断面」(古松崇志・臼杵勲・藤原崇人・武田和哉編『金・女真の歴史とユーラシア東方』勉誠出版、2019年)などがある。吉野正史(よしの・まさふみ)明治大学兼任講師。専門は十二~十五世紀の中国北方政治史。著書に『中国の歴史・現在がわかる本 第三期〈1〉13~14世紀の中国』(かもがわ出版、2018年)、論文に「「耶律・䔥」と「移剌・石抹」の間―『金史』本紀における契丹・ 奚人の姓の記述に関する考察」(『東方学』127、2014年1月)、「巡幸と界壕―金世宗、章宗時代の北辺防衛体制」(『歴史学研究』2018年7月)などがある。