カンケイセイソウシツノジダイ

関係性喪失の時代

大木昌 著
ISBN 978-4-585-05334-7 Cコード 0036
刊行年月 2005年10月 判型・製本 四六判・上製 232 頁
キーワード 現代社会

定価:2,750円
(本体 2,500円) ポイント:75pt

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書籍の詳細

今日の日本と世界には、目を覆いたくなるような事件や出来事が満ち、政治、経済、社会のどの分野でも将来に希望をもてるような展望が一向に見えてこない。動機が不明な殺人、自殺の多発、増税と老後の生活不安と政治不信、官僚や企業による金銭問題、治安の悪化、いつまでたっても安定しない経済。国際社会では紛争や戦争の過程で、モノを「壊す」ように人を殺している。

多くの日本人は、いったい今の日本や世界はどうなっているのか、どのように理解したらよいのか、これからどうなってゆくのか、いつごろからなぜ、こんな風に変わってしまったのかといった暗澹たる想いと素朴な不安を抱いている。これらは、一種の社会的病理といってもよい。

一つひとつの問題に対しては「専門家」が原因その他を説明してくれるが、何が進行しているのか、何を意味しているのかという全体状況については正体がわからない。実は、私たちの不安とは、正体がわからない不安である。

本書は、現代の社会的病理の根底に横たわる問題として「関係性の喪失」「物語の喪失」「想像力・共感力の喪失」という三つの喪失を取り上げ、それらを切り口として、「壊れてゆく」日本と世界を読み解くことを目的としている。

「壊れてゆく」内容は、これまで安心と安定を与えてくれた仕組みや心のバランス、いのちへの尊厳などである。

「壊れてゆく」状況を生みだしている主要な震源は、自然と人間・人と人との関係性の喪失であり、それに個人と国家社会・世界が将来を見通した見取り図を描けないこと=「物語」の喪失、自然や人に対する想像力(したがって共感力)の喪失、を加えた三つの喪失が密接に関連しながら現代の日本と世界の社会病理を構成している。本書は、これらの喪失をもたらした深淵を歴史的に探ってゆく。

 

 

目次
はじめに

第一章 一緒に死ねる相手で在るから
     ―大阪河内長野市家族殺傷事件を手掛かりとして
1 破滅への恋路
2 嫌いな言葉は「希望・未来・光・明日・生」
3 友人・家族・地域社会の溶解
4 「私」領域の拡大

第二章 関係性喪失の時代―壊れてゆく日本と世界の様相

第三章 小さな物語の喪失(I)
1 「小さな物語」と「大きな物語」
2 「小さな物語」の喪失―さまざまな戦争

第四章 小さな物語の喪失(II)
1 心の戦争―生きにくい世の中とリストカット
2 いのちの戦争―さまざまな自殺
3 ネット自殺の裏側で―死ぬより生きることが怖い

第五章 大きな物語の喪失―漂流する日本と世界
1 日本の「大きな物語」
2 世界の「大きな物語」

第六章 想像力・共感力の喪失―「壊されてゆく」いのち
1 想像力と共感力
2 自然から遠く離れて―森・川・海の連鎖
3 いのちから遠く離れて―「死」の想像力の喪失
4 「九・一一」、アフガニスタン、そしてイラク―いのちの大量破壊

第七章 近代社会と関係性の喪失
1 シューマッハーの憂い
2 個人主義と関係性の喪失
3 資本主義と関係性の喪失
4 IT革命と関係性の無機質化

終章 失われた叡智を求めて
1 「分かち合う」社会―オーストラリアのアボリジニ社会
2 ドリーミングという「物語」
3 共同幻想の世界観―ナバホ族の集団的癒し

おわりに

あとがき

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