ニホンジンハカンブンヲドウヨンダカ

日本人は漢文をどう読んだか

直読から訓読へ
湯沢質幸 著
ISBN 978-4-585-38006-1 Cコード 1081
刊行年月 2024年5月 判型・製本 四六判・並製 240 頁
キーワード 国語学,日本語

定価:3,520円
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書籍の詳細

日本において古代から現在に至るまで延々と読み継がれてきた漢文。
その読み方には中国から渡来した中国音で読む〈直読〉、そして、平安時代に生まれ、漢文読解の方法としてその地位を確立した〈訓読〉の二種類が存在する。
しかし、古代から現代までの間に〈直読〉は消え、日本語で読む〈訓読〉がもっぱら使われるようになった。
なぜ、日本では〈訓読〉優位の状況が生じたのか―。
漢文を取り巻く環境を一つ一つ分析することを通して、〈直読〉から〈訓読〉への変化を追い、日本人の漢字漢文受容の歴史を描きだす。

 

 

目次
本書の目的
凡例

第一章 直読と訓読―現代と平安時代―
1 現代の直読と訓読
1―1 直読[中国語文・字音声読]
1―2 訓読[日本語翻訳文=直訳文・日本語音声読]
2 平安時代の直読と訓読
2―1 直読[中国後古典文=漢文・呉音漢音声読]
2―2 訓読[日本語翻訳文=直訳文・日本語音声読]
3 現代と平安時代
4 平安時代儒学界

第二章 平安時代儒学界の直読と訓読―『宇津保物語』と『北山抄』『江家次第』―
1 『宇津保物語』講書における直読と訓読
1―1 「一度は訓、一度は音に」―直読訓読併存―
1―2 「手づから点し」―加点者仲忠―
1―3 「果てに、一度は訓、一度は音に読ませたまひて」―解義後の声読―
1―4 「読む」の意味
1―5 『宇津保物語』の情報―直読訓読併存等―
2 『北山抄』『江家次第』釈奠における直読と訓読
2―1 『北山抄』
2―2 『江家次第』
2―3 釈奠での直読訓読併存
3 『宇津保物語』と『北山抄』『江家次第』―併存―
3―1 『宇津保物語』の併存
3―2 『北山抄『江家次第』の併存

第三章 〈直読から訓読へ〉―直読の衰退―
1 直読消滅の時期
1―1 直読の儒書
1―2 漢音加点『蒙求』
1―3 唐音直読論
2 直読消滅の原因と過程―外因説―
2―1 直読消滅と日中関係―遣唐使廃止―
2―2 直読消滅と朝廷・大学寮の衰退
2―3 外因説の可能性と限界―内因説の検討―

第四章 平安時代の訓読―『白氏文集』―
1 『白氏文集』「新楽府」「海漫々」
2 直読の可能性
3 訓読と訳読との比較
4 訓読と訳読(1)―文・声読―
4―1 文
4―2 声読
4―3 相違と情報
5 訓読と訳読(2)―文・声読以外―
5―1 紙面における相違
5―1―1 呈示場所
5―1―2 呈示方法
5―1―3 呈示における相違と情報
5―2 補読
6 訓読と訳読(3)―補読―
6―1 [訓読文]の補読
6―1―1 漢字
6―1―2 送り仮名―「無ク・最モ・深キ」―
6―2 補読使用語選択の実際
6―2―1 漢字―「海」「漫々」―
〔コラム:儒書呉音使用〕
6―2―2 送り仮名―「無ク・深キ」―
6―3 補読における訓読と訳読
6―4 無加点の理由―失念説と委託説―
6―5 補読と文の完成・声読
6―6 声読における訓読と訳読
6―7 補読における相違と情報
7 訓読と訳読(4)―文再生における複雑さと労力―
8 直読と訓読
8―1 文
8―2 声読
8―3 直訳文呈示場所等
8―4 補読
9 再度『宇津保物語』へ

第五章 『宇津保物語』併存の再検討
1 訓読先行・直読後行
2 訓読先行=訓読優先
3 訓読優先=解義重視
4 加点漢文における併存―加点漢文化即訓読―
5 訓読先行と天皇
6 直読先行・訓読後行
7 加点漢文併存における訓読優先(1)
8 加点漢文併存における訓読優先(2)
9 末尾直読の消滅―加点漢文における直読―
9―1 末尾直読の存在価値
9―2 末尾直読の存在理由
9―3 末尾直読の消滅理由
10 漢文読解の目的と直読
11 〈一表記、一文、一読〉と末尾の直読
12 直読の全面的消滅―加点漢文から漢文全体へ―
〔コラム:訓点は封印〕
13 『北山抄』『江家次第』の併存―直読先行・訓読後行―

訓読と訳読・直読の比較再考

第六章 平安時代儒学界と直読
1 朝廷・大学寮の衰退と漢音直読
2 大学寮衰退
2―1 大学寮焼失
2―2 家学化
2―3 明経家の音博士吸収
3 大学寮衰退からの説明の限界
4 音道・音博士の消滅
5 鎌倉時代の音道・音博士
6 鎌倉時代の武家と直読
7 儒学界での直読消滅

第七章 儒学界と仏教界
1 共通点
2 相違点
2―1 直読一部残存と完全消滅
2―2 訓読成立時期の遅速
2―2―1 奈良時代直読における両界の相違
2―2―2 儒学界訓読成立の時期
2―2―3 訓読成立後―直読消滅時期の遅速―

第八章 〈直読から訓読へ〉の周辺
1 直読の新生
1―1 唐音直読
1―1―1 中世唐音
1―1―2 近世唐音
1―1―3 唐音直読と呉音漢音直読
〔コラム:唐音直読と寛政異学の禁〕
1―2 現代中国字音直読
〔コラム:直読論の誤解と限界〕
1―3 新来字音直読の定着
1―4 新音直読と訓読
1―5 訓読は国風文化
2 訓読の先駆け―加点漢文の土台―
2―1 変体漢文―『古事記』―
2―1―1 『古事記』と「訓読文」
2―1―2 補読
2―1―3 日本語文呈示における変体漢文
2―1―4 外国語文と複数の翻訳文
2―1―5 変体漢文の声読
〔コラム:書き下し文〕
2―1―6 変体漢文と加点漢文・漢文
2―1―7 変体漢文と加点漢文―「訓読」と訓読―
2―1―8 宣命書き文―『続日本紀』―
2―2 万葉仮名文―『万葉集』―
2―3 訓読の先駆け
3 朝鮮の「訓読」

結語
参考文献
後記
プロフィール

湯沢質幸(ゆざわ・ただゆき)
1943年群馬県前橋市生まれ。専門は日本語史研究。
東京教育大学文学研究科修士課程修了。博士(文学)筑波大学。佐伯国語学賞。山形大学・筑波大学・京都女子大学に勤務。
著書に『唐音の研究』(勉誠社、1987年)、『日本漢字音史論考』(勉誠社、1996年)、『古代日本人と外国語』・同「増補改訂」(勉誠出版、2011年)、『音声・音韻探求法』(松崎寛と共著、朝倉書店、2004年)、 『近世儒学韻学と唐音』(勉誠出版、2014年)、『漢字は日本でどう生きてきたか』(開拓社、2017年)などがある。

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