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20世紀の平家物語研究は、語り本(略本平家系)を中心に語り性の追求が焦点で、読み本(広本源平系)は等閑視されてきた。本書では、平家物語編纂説の立場から、主に延慶本・長門本を中心に研究を進め、その成立を真言圏(醍醐寺・仁和寺)に設定するとともに、物語の受容・変容の諸相についても考察を試みた。平家物語の現成を確認し、平家物語を中心とした一大文芸世界の創成を見出す。
麻原美子(あさはら・よしこ)日本女子大学・名誉教授(文学博士 筑波大学)。著書に『幸若舞曲考』(単著・昭55年・新典社刊)、新日本古典文学大系『舞の本』(麻原美子・北原保雄 校注・平6年・岩波書店刊)、『長門本平家物語自立語索引』(共編 麻原美子・小川栄一・大倉浩他・平21年・勉誠出版刊)『平家物語長門本・延慶本対照本文』(共編 麻原美子・小川栄一・大倉浩他・平22年・勉誠出版刊)などがある。