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今日まで描かれてきた世界史の中に、女性たちの姿をくっきりと見出すことは容易ではない。世界史の研究・叙述の新たな方向性が検討される現在、「女性とともにある」世界史の叙述は可能なのか。東南アジアから、アジア諸地域、ヨーロッパ諸地域、中南米までを視野に入れ、①中心をずらし、女性から描く新しい世界史叙述、②史料の制約が前提となる、世界各地の女性のライフイベント比較史、③異文化接触地域における女性たちの可視化、3つのアプローチから、世界史の中に女性を見出すための新たな方法を探る。
水井万里子(みずい・まりこ)九州工業大学大学院工学研究院教授。専門はコーンウォルすず鉱業史、イギリス東インド会社植民都市史。主な著書・論文に「イギリス鉱物資源史と環境―コーンウォル半島鉱業地域の事例から」(水島司編『環境と歴史学』勉誠出版、2010 年)、『世界史のなかの女性たち』(編著、アジア遊学186号、勉誠出版、2015 年)、「近世イギリスのスタナリ議会―すず鉱業地域利害の調整と回路の検討」(青木康編『イギリス近世・近代史と議会制統治』吉田書店、2015 年)などがある。伏見岳志(ふしみ・たけし)慶應義塾大学商学部准教授。専門は中南米・大西洋史。主な著書に「密輸が成功するにはなにが必要か―17世紀の大西洋密貿易商人による覚書の分析」(『人文科学』27、2012 年)、「スペイン領アメリカにおける逃亡者コミュニティの生成」(『歴史学研究』924、2014 年)などがある。太田 淳(おおた・あつし)広島大学大学院文学研究科准教授。専門は近世・近代インドネシア史。主な著書・論文に「近代のネガ、または取り込まれた異者―19世紀マレー海域の海賊」(『現代思想』39-10、青土社、2011 年)、「ナマコとイギリス綿布―19世紀半ばにおける外島オランダ港の貿易」(秋田茂編『アジアからみたグローバルヒストリー―「長期の18世紀」から「東アジアの経済的復興」へ』ミネルヴァ書房、2013 年)、『近世東南アジア世界の変容―グローバル経済とジャワ島地域社会』(名古屋大学出版会、2014 年)などがある。松井洋子(まつい・ようこ)東京大学史料編纂所教授。専門は日本近世史。主な著書・論文に「長崎出島と異国女性―「外国婦人の入国禁止」再考」(『史学雑誌』118 編2 号、2009 年)、「ジェンダーから見る近世日本の対外関係」(荒野泰典他編『日本の対外関係6 近世的世界の成熟』吉川弘文館、2010 年)、「長崎と丸山遊女―直轄貿易都市の遊廓社会」(佐賀朝・吉田伸之編『シリーズ遊廓社会Ⅰ 三都と地方都市』吉川弘文館、2013 年)、「貿易都市長崎からみた近世日本の「売春社会」(『歴史学研究』926 号、2014 年)などがある。杉浦未樹(すぎうら・みき)法政大学経済学部教授、2014 年より『糸・布・衣の循環史研究会』を主宰(http://www.lccg.tokyo)。専門は近世都市流通消費史。主な著書・論文に「行商と古着商―近世江戸とアムステルダムの都市内商業における周縁性の比較考察」(田村愛理他編『国家の周縁性と近代』、共著、刀水書房、2015 年)、Use and Value of Cloth/Clothing in 18th-20th centuries(. 編著、2016年刊行予定)などがある。