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日本建築の歴史的評価とその保存

山岸常人 著
ISBN 978-4-585-22268-2 Cコード 3021
刊行年月 2020年2月 判型・製本 B5判・上製 672 頁
キーワード 建築,文化史,仏教,日本史

定価:18,700円
(本体 17,000円) ポイント:510pt

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書籍の詳細
吾々は建築なくしては記憶することは出来ない―ジョン・ラスキン『建築の七灯』

私たちをとりまく社会・環境には、様々な時代に建てられた多種多様な建造物が混在している。
これらの建造物は、過去から現在まで積み重ねられた記憶、即ち歴史の蓄積を伝えており、それらが残され、使い続けられることにより、生活を豊かで味わいのあるものとしている。
しかし、経済優先の現代社会においては、一面的かつ短絡的な価値判断により、多様な価値を有する歴史的建造物の意義が見失われ、破壊や場当たり的な改変がなされている。
歴史的建造物をどのように調査するのか、調査した建造物の特質をどのように読み取るのか、その特質を踏まえてどのように保存を行ってゆくべきなのか、その保存のための制度の課題は何か。
長年にわたり調査・研究・保存に携わってきた知見より、
歴史的建造物を保存し将来に伝えて行くための考え方と、その具体的な事例を提示する。

 

 

目次
序 歴史的建造物の調査・研究と保存

第一部 建築遺構の歴史的評価
第一章 文化財保護の課題
第二章 歴史的建造物の調査・評価・保存
   序
   第一節 歴史的建造物保存の現状
   第二節 未指定文化財の調査
   第三節 価値評価の新たな視点 その一
   第四節 価値評価の新たな視点 その二
   第五節 地域の文化遺産の継承
第三章 文化財建造物保存の実態と歴史研究―寺社建築を中心に―
   はじめに
   第一節 文化財建造物保存の基本的考え方
   第二節 歴史研究と文化財建造物の評価・保存
   結論

第二部 近世寺社建築を読む―調査方法と近世建築の特質―
第一章 寺社建築の調査方法
   第一節 沿革の調査
   第二節 建物の建設・修理年代の確認
   第三節 建設年代判定と痕跡調査
第二章 法隆寺の棟札と棟木銘
   第一節 棟札の歴史
   第二節 法隆寺の棟札類
第三章 近世寺社建築における十八世紀―時代の特性について―
第四章 仏堂の近世的特質―百済寺本堂を中心として―
   はじめに
   第一節 百済寺本堂
   第二節 百済寺本堂の近世的特質
   第三節 中世仏堂の近世的変容
   まとめ
第五章 近世の寺院建築の特質
   はじめに
   第一節 寺院の増加
   第二節 宗派独自の仏堂平面形式
   第三節 空間と装飾の展開
   まとめ
第六章 真宗寺院本堂の宗派的特質と地域性
   第一節 真宗十派とその本堂
   第二節 建設・改造の年代とその契機
   第三節 古式な要素の遺存
   第四節 平面の多様性
   第五節 架構の発達
   第六節 真宗寺院本堂の地域性
   おわりに

第三部 地域における近世寺社建築の特質
第一章 近江の寺院建築の特質
   第一節 近江の寺院建築の特質
   第二節 近江の真宗本堂
第二章 紀州の寺社建築
   第一節 紀州の寺院建築の特質
   第二節 和歌山県内の近世の仏堂における特殊な架構
   第三節 熊野造について

第三章 播磨の仏堂と多宝塔―黒田庄町の荘厳寺本堂と多宝塔を中心に―
   第一節 荘厳寺本堂と多宝塔
   第二節 県内の五間堂と荘厳寺本堂
   第三節 兵庫の多宝塔と荘厳寺多宝塔
   おわりに
第四章 島根県下の神社拝殿小考―城上神社・佐毘売山神社の拝殿をめぐって―
第五章 讃岐の寺社建築
   第一節 四国霊場白峯寺頓証寺堂舎の特質
   第二節 四国霊場弥谷寺本堂の特質
   第三節 讃岐の近世後期の神社本殿―川上神社本殿を例に―

第四部 民家の技法と特質
第一章 朽木谷の民家形式
   はじめに
   第一節 対象地域と民家の分布状況
   第二節 分布域形成の要因
   第三節 オマイリ・コマイリの平面と構造
   まとめ
第二章 茅葺屋根の小屋構造―神戸市西区・北区の農家を対象として―
   はじめに
   第一節 束組の類型
   第二節 オダチ・トリイ組の類型の形式的変遷
   第三節 束立の類型の変遷
   第四節 平面との関係
   第五節 束と叉首を併用する小屋組
   まとめ

第五部 工匠と建築
第一章 近江の大工
   第一節 特徴的な作風をもつ大工と作例
   第二節 周辺の大工
   第三節 他郡・他国の大工と寺抱えの大工
第二章 丹波・播磨・但馬・摂津の大工と建築
   第一節 丹波の建築工匠
   第二節 彫物師中井氏
   第三節 西脇の寺社大工
   第四節 摂津の建築工匠
第三章 近代の寺社建築と工匠
   第一節 兵庫の近代寺社建築と工匠
   第二節 滋賀の近代宗教建築と工匠
   第三節 京都の近代寺院建築と工匠

第六部 発掘遺構の復原的考察
第一章 発掘遺構・建築遺構と復原
   はじめに―復原の意義―
   第一節 「復原」模型の批判的検討
   第二節 文化財建造物「復原」の批判的検討
   第三節 「復原」の目指すべき方向
   おわりに―建造物が真の歴史学的史料として役に立つために―
第二章 先史・古代の建築技術
   第一節 飛鳥時代建築の導入と特質
   第二節 先史時代の建築技術の特色
   第三節 奈良時代・平安時代前半の建築技術
   第四節 古代寺院の法会と建築
   第五節 中世へ
第三章 先史・古代建築遺構の復原的考察
   第一節 極楽寺ヒビキ遺跡
   第二節 長岡京東院
第四章 発掘遺構からみた中世仏堂
   第一節 中世仏堂形式の初期形態―安祥寺―
   第二節 野小屋の成立と流布―大知波峠廃寺―
   第三節 正方形平面の中世仏堂―普門寺―
   第四節 九州の中世仏堂と塔の遺構―宝満山―
   第五節 律衆の関わった仏堂―報恩寺―
   第六節 播磨伊川谷の中世寺院―頭高山遺跡―
第五章 湯屋の復原
   第一節 宝菩提院の湯屋
   第二節 醍醐寺の湯屋

第七部 文化財建造物の保存修理の理念と方法
第一章 保存修理の理念
   はじめに
   第一節 守るべきもの―歴史的価値―
   第二節 復原的な保存修理の問題点
   第三節 建造物に付随する価値
   第四節 部材・材料の保存
   第五節 取替部材の処置
   第六節 修理方針決定の手続き
   第七節 指定種別による保存修理の質の差異
   第八節 文化財保存修理技術の普及
   結語
第二章 復原的修理の課題
   はじめに
   第一節 復原主義の論理
   第二節 復原主義の具体的問題点
   第三節 復原主義の歴史学的問題点
   第四節 復原の社会的評価
   まとめ
第三章 保存修理の技術
   はじめに
   第一節 日本建築の特質
   第二節 修理技術
   第三節 文化財の保存修理
   第四節 木造技術の普遍化とその課題
   まとめ

第八部 震災と文化財
第一章 災害と文化財
   第一節 前提
   第二節 歴史的建造物の意味
   第三節 歴史的建造物保存の基本姿勢
   第四節 具体的方策
   まとめ
第二章 初期の耐震対策の一例
   はじめに
   第一節 歴史的建造物の被害の特質
   第二節 文化財における震災対策
   第三節 歴史的建造物の震災対策の基本的な考え方
   まとめ

あとがき
成稿一覧
図版・表出典一覧
索 引
プロフィール

山岸常人(やまぎし・つねと)
昭和27年生まれ。京都大学名誉教授。専門は日本建築史。工学博士(東京大学)。
主な著書に『中世寺院社会と仏堂』(塙書房、平成2年)、『中世寺院の僧団・法会・文書』(東京大学出版会、平成16年)、『塔と仏堂の旅 寺院建築から歴史を読む』(朝日選書772、朝日新聞社、平成17年)などがある。

書評・関連書等

★書評・紹介★
『佛教タイムス』(2020年5月21日)に書評が掲載されました。
→(評者:中山章(建築家))
『日本歴史』(2021年4月号)に書評が掲載されました。
→(評者:海野聡氏(東京大学大学院工学系研究科准教授))

★関連書籍(巻末広告より)★
●総本山醍醐寺 編『醍醐寺叢書史料篇 建築指図集 第一』
●山岸常人 編『歴史のなかの根来寺 教学継承と聖俗連環の場』
●醍醐寺文化財研究所 編『醍醐寺文化財調査百年誌 「醍醐寺文書聖教」国宝指定への歩み』
●威光山法明寺 近江正典 編『雑司ヶ谷鬼子母神堂開堂三百五十年・重要文化財指定記念 雑司ヶ谷鬼子母神堂』
●久留島典子・高橋則英・山家浩樹 編『文化財としてのガラス乾板 写真が紡ぎなおす歴史像』
●湯山賢一 編『古文書料紙論叢』
●池田寿 著『紙の日本史 古典と絵巻物が伝える文化遺産』
●池田寿 著『日本の文化財 守り、伝えていくための理念と実践』
●湯山賢一 編『文化財と古文書学 筆跡論』
●高山寺 監修/京都国立博物館 編『鳥獣戯画 修理から見えてきた世界 国宝 鳥獣人物戯画修理報告書』
●小島道裕・田中大喜・荒木和憲 編/国立歴史民俗博物館 監修『古文書の様式と国際比較』
●春田直紀 編『中世地下文書の世界 史料論のフロンティア(アジア遊学209)』
●馬部隆弘 著『由緒・偽文書と地域社会 北河内を中心に』
●佐藤孝之・三村昌司 編『近世・近現代 文書の保存・管理の歴史』
●日本古文書学会 編『古文書研究』(続刊)

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